ワーキング・バックワード | 株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

数年前にNHKで放映された

 

「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」

 

という番組をご存知だろうか?

アマゾンの奥地、ブラジル・ペルー国境の森に生きるという、文明と接触したことのない先住民「イゾラド」を追う番組。取材班は命の危険にさらされながら、素っ裸の彼らと徐々に接触し、コミュニケーションをとりながら実態を追うドキュメンタリー番組。川口浩探検隊シリーズ(若い人には分かるまい)のガチンコバージョンといったら茶化し過ぎだろうか、、

 

この手の番組が大好きだ。

 

たまに深夜に再放送されているので、時間が合えば観ている。

自分で現地に行こうとは思わないが、リビングのソファーという安全地帯からそっと覗いてみたいのだ。

 私の興味は「未開の部族」だけではない。深い森でのオラウータンの組織行動、コモド島のコモドドラゴンや未知の深海生物など。なぜだか、生態がまだ不明な生き物のドキュメンタリーには大抵魅了される。

今度YouTubeでゆっくり探してみたい。

 

さて、

今月前半に業界団体の会合があり、AmazonのOBの方の講演を拝聴した。講演にピンと来るものがあり、翌日書籍を博多のリアル書店で探した。講演者の著書は見つけられなかったが、

 

 

を見つけ、早速購入。(入山教授の推薦なら間違いないだろう)

ジェフ・ベゾスの凄さが分かる本。しかも日本の大企業や中小企業にも応用可能な良書だと思う。

 If you have not read yet,you had better read it.

著者はソニー、シスコシステムズ、日本GE、Amazonなどに名立たる企業に勤務し、日本AmazonではCDやDVDを売る部門のトップだった方。

本のテーマは「Amazonがいかにしてイノベーションを起こし続けているのか」である。Amazon初期のイノベーションは起業家としてのジェフ・ベゾスに負うところが大きいが、今や売上20兆円以上、グローバルで様々な事業展開しているAmazonには組織としてイノベーションを起こし続ける仕組みがあるのだ。

 

読んで頂くのが一番良いが、私なりにエッセンスを抽出するなら以下になるだろう。ポイントは前半に書いてあり、あとは細かな独自の手法の紹介だ。

 

地球上で最もお客様を大切にする企業を目指し、ITやテクノロジーを使って徹底的に顧客体験を磨き続ける。

 

がAmazonのミッションの本丸であり、本気で目指している。

 

「顧客志向」

「イノベーション」

「長期思考」

 

を信念として、ミッションの実現に邁進している企業。

その過程での失敗やカニバリにも一切躊躇しない。これらを許容というより、むしろ歓迎している。

その為に組織的にイノベーションが起こせるよう、仕組みづくりも磨き続けている。この仕組みが我々も参考にできるのではないか。

 

このイノベーションを創出する為の思考プロセスが

 

「ワーキング・バックワード」

 

で、顧客のニーズからスタートして、そのニーズの解決策となる製品・サービスを発案し、具現化していく考え方だ。

つまり、自分たちの現在の固有技術や強みから打ち手や新製品・サービスを発想しているわけではなく、あくまでもお客様のニーズに取りついて顧客ニーズを把握し、それを解決する方法を企画立案。それを実現する為に必要なリソース(技術やノウハウ)は新たに獲得することでそれを具現化していく。

ベゾスは出発点となる顧客ニーズの把握について


Customer Obsession

 

顧客への「取りつき」、あるいは「執着」という言葉を選んでおり、並々ならぬ本気度が伝わってくる。

 この本一番のポイントはお客様が最高に満足している状態から逆算して、それを実現する為なら新しい技術や人材の雇用も既存事業とのカニバリも躊躇しない点だと自分は理解した。

 自前の端末kindle(キンドル)の提案が社員から上がった時は、主要な幹部は「我々は製造業ではない」と反対する。好調な本のECとカニバルことも間違いない。

しかし、ベゾスは

「これまでに印刷されたすべての本を60秒以内に読めるようにする」

という最高の顧客体験実現の為にゴーサインを出す。

その実現の為にAmazonは

「電子デバイスの製造」

という新スキルを獲得する。(恐らく、人材獲得、アライアンス、M&Aなどがあったのでしょう)

 それが、その後アレクサ、エコー、ファイア、ファイアTVスティックなどへの開発へと繋がっていったのだ。

 

 弊社の事例で恐縮だけど、15年くらい前から、WEB制作の話を頂くようになり、これからの時代、WEB制作の機能がないとこれからのお客様の真のニーズは満たせないと確信し、WEB制作者を採用することにした。久留米にはそういう人材が乏しく、やっと採用した最初の二人はロクな人物ではなかったが、二人が去った後、ヘッドハンターまで使いリーダーを得た。それから徐々に良い方が定着し、人員も増え始め、今では10名以上の陣容となった。

 このWEB制作の技術を獲得していたお蔭で、食品EC支援にも取り組めたし、インディードの代理店にもなれ人材ビジネスにも進出できた。

印刷通販も一定の成果が出ているし、運営しているいくつかのオウンドメディアはマネタイズは道筋たってないけど、お客様のお役に立てている実感がある。

 

弊社でもつい、やりがちなことだけど、印刷会社は昔から、印刷機等の設備投資こそが差別化だと思ってしまうところがある。その投資した設備で製造できることを考え、それをお客様に提案する。

 

これは提案営業とは言わない。

 

プロダクトアウトの発想が抜けないから、印刷通販という破壊的イノベーションの前に業界全体が枕を並べて討ち死に寸前なのだ。

 

しかし、全国レベルで探すと顧客ニーズから出発して、自社のビジネスを再構築している素晴らしい印刷関連企業が数社ある。

詳しく調べると、これら企業はもはや印刷業ではない。

Amazon同様に顧客の課題を解決する為に様々なスキルを獲得してきた結果だろう。

これらを安易に直接真似することはできない。

 

お客様が違えば、お困りごとも違うからだ。

経営者は「困ったらお客様の声を聞きなさい」と昔から言われるが、Amazonは顧客の声と地球上で最も向き合っている企業と言える。

 

これを一人のカリスマ経営者が行うのではなく、それぞれの社員がお客様の為のイノベーションを考え、企画し、社内で様々な議論をし、フィードバックを得る中で磨かれ、最終的には社内のリソース投入を得て、この瞬間も世界中で多くの取組みが行われている仕組みにこそAmazonの凄さがある。それらチャレンジにつきものの「失敗」も許容されている。規模に見合う「失敗」が必要であると。

 

ベゾスの社員へのメッセージを紹介して終わる。

I constantly remind our employees to be afraid,to wake up every morning.Not our competition,but of our customers.

顧客を恐れなさい。毎朝、競合企業に対する恐怖ではなく、顧客に対する恐怖で目覚めるのです。

 

Amazon恐るべし