このままもっと《番外編》ピンチヒッター | sakurabaでいっぱい 〜SA妄想小説〜

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赤さんと緑くんによるソフトな萌キュンイチャコラですが、激しめなものも書いておりますので未成年の方、男性の方はご遠慮下さい。

コメントは基本的に未承認にしております。




今回は山。

最近ここの人達書くの楽しい(笑)

後半少しだけ雅紀くん視点になります。


↓このおはなしのはじめは。。


。。。。。



「翔くん!もっと腹から声出せ!」

「はいっ!……ぃらっしゃいませーー!!」


「…声がでけーよ!バカ!応援団じゃねーんだよ!」

「えー…腹から声出せつったの智くんじゃん……」


俺は理不尽なことを言う智くんを睨みつけた。

と、とたんに睨み返される。


「なんだと?店長に逆らうのか?」

「あ、いえ……別に……」

「だいたいが翔くんがまーくんを起きれなくしたから悪いんじゃねーのか?」

「……うっ……」


そう言われるとなにも言い返せない。




さっきまで慌ただしく、店内に溢れていた客たちをなんとかさばいて、やっと落ち着いたとこだ。


智くんはこれみよがしに俺の顔を見ながらデッカイため息をつく。


「まーくん、かわいそうになぁ……
翔くんに何回も何回も食われちゃって……」

「さっ、智くん……?」

「おいらも働き者のかわいいまーくんと一緒に働きたかったのになぁ……
なんでこんな、役にも立たねー不器用なヤツと一緒に仕事しなきゃなんねーんだよ……」



そんなこと言われても……と、思いながらも弁解の余地はないわけで……。


昨夜、雅紀があまりにもかわいすぎてガッツいてしまって何度も何度もイカせてしまった。

休みの前日と言うことでかなりテンションが上がってしまっていたと言うのも重なり……

最後にはもう雅紀の意識はなくて……

いつも通り雅紀やベッドをキレイにしてから俺も寝たんだけど、朝になっても雅紀は起きれなかった……。


『ゴメン、ね?翔ちゃん……』

『イヤ、雅紀が悪いんじゃないし。
幸い俺は今日休みだから雅紀のピンチヒッター務めてくるな?』

『ん……がんばってね?』


そうして、ベッドの中で横たわる雅紀に見送られながら智くんのパン屋に手伝いをしに来ているわけだ。

なのに、さっきから智くんはブツブツ文句ばっかり言ってる。



「でもそれちょっと言い過ぎじゃね?
俺だってがんばってるし!」


俺が苦笑いしてそう言うも、智くんはジロッと睨んでくる。


「全っ然言い過ぎじゃねーし。
パン並べさせりゃ落とすしよー。
レジやらせりゃ金ぶちまけるしよー。
パン作り手伝わせりゃ砂糖と塩間違えるしよー。
あと……」

「あー!あー!もういいって!ごめん!
俺が悪かったです!」

「自分の仕事はバリバリできんのにホンットこういう事は苦手だよなー、昔っから」

「そ、そぉ?」

「褒めてねーし。
高校ん時も数学や英語とかの勉強はすっげーできてたのに家庭科とか技術工作とか作るもんは壊滅的にダメだったよな」

「あ、えと、うん…そうだね……」

「理科もテストは満点のくせに実験になるとからきしダメだったもんなー!いっつもなにか爆発させてただろ!」

「あ、えと、うん……そうだね……」

「んっとに、まーくんもどこがいいんだ、こんな不器用なヘタレオトコ」

「だっ、だから…それちょっと言い過ぎ……」


あまりにも言われすぎて本気でヘコんで来たし……。


でも、自分で言うのもなんだけど昔から勉強だけは確かにできてた。

家庭科とかの実習になるとホントにダメだったけど。


逆に智くんは、勉強はそこそこだったのに、何かを作り上げるって面では芸術家並みにすばらしかったよな。

この店のパンも味はもちろんだが、密かにそういう面でも人気があるらしい。

なんでも、パンのフォルムがすばらしいらしい。


…シロウトのオレにはまったくわからないんだけどね。



「はぁー!すっげー疲れたぁ!」


俺は息を思い切り吐きながら智くんの隣のイスに座り込む。



「なにが疲れただ。
疲れるほど仕事してねーじゃん」


まだ言うのか……

いい加減本気で落ち込みそうになって智くんを見ると、悪態をつきながらも優しい顔を向けてくれていた。


「まぁ、でも助かったよ。
翔くんとこんな風にゆっくりとした時間を過ごすのも久しぶりだしな」

「智くん……」


俺は少しジーンとして年甲斐もなく目に涙が滲んできた。



「まぁ、でも翔くんの後始末でまったくゆっくりはできてねーか!」


そう言ってあははは!と大口を開けて笑い出す。



「だっ、だからー!それは悪かったって!」


俺がまた謝ると智くんは笑いながら「工房行ってんぞー」と言いながら奥に入っていった。


レジの前に立ち直すとドアベルが鳴った。



「あ!いらっしゃいませー!」


慌ててお客を迎える。


入ってきたのはOL風な女性が3人。


「……ほら!ほら!」
「ヤダー!ホントだー!」
「ヤバーイ!」


入ってきたとたん、ボソボソと、でもキャーキャー言ってる。



……なんだ?


つーか、その中のひとり、確か朝も買いに来てなかったか?

よっぽどここのパンが好きなのかな?

まぁ、めっちゃうまいしな。


俺はさほど疑問も持たずレジの前で待機する。


するとその中の、朝も来たと思う女性がおずおずとレジまで来た。


「あのー……」

「はい?」

「オススメのパンとか、ありますか?」

「え?」


オススメって言われても……

俺、今日初めて入ってるしなー。

つーかどれもおいしいんですけど?

智くんに聞こうと思ったけど、多分工房の中で集中してるだろうから、わざわざ呼びに行くのも気が引けた。


「えっと、どれもおいしいですよ?
甘いパンや惣菜系のパンとか色々ありますのでごゆっくり選んでください」

営業スマイルを見せてニッコリと微笑む。


そのとたん、またキャー!と声が上がる。


なんだ、なんだ?

俺、なんかおかしかったかな?


「あの……一緒に選んでもらっていいですかー?」

「……は?」


なんで?と思ったけど、ほかに客もいなかったし、説明くらいならできるかなと思ってレジから出てトレーとトングを持って女性達の方へ歩いて行った。


「別にいいですけど……
どれが気になりますかね?」


女性達と一緒にパンが並ぶ棚へと移動する。


「えっと、お名前、なんて言うんですか?」

「えっ?どのパンですか?」


俺がそう言ったとたん、またひとしきりキャーキャー言ってる。


だからなんなんだよ。


「そうじゃなくて、アナタの……」

「え?俺?えっと……櫻井、ですけど」

「下のお名前は?」

「翔……ですけど……」


パン選ぶのに俺の名前聞いてどうすんだよ。

おかしいと思いながらも客だし、無下にもできない。


「櫻井翔さんて言うんだー!」
「ステキなお名前!」
「名前までカッコイイ!」


だから……パン選んでくれよ。


「あの、おいくつですか?」

「え?あ、と……28、ですけど……」


そう答えるとまたキャーキャー。


もう、なんだってんだよ!


いい加減イライラしてきた。


「あの……彼女とか、いらっしゃるんですか?」

「彼女?」


彼女って……雅紀は彼女じゃないし、つーか嫁だし。


「彼女はいないけど……」

嫁ならいます。


そう言おうとしたら

「いないんだって!」
「ヤッタ!」
「もう決まりだよね!」


「え?パン、お決まりですか?」

そう言ってトングを持ち直すとまたキャーキャー。


もういいって。


俺はうんざりしながらトングを持つ手を下ろした。


「あの!彼女いなかったら、今度お食事でも……」

「……は?」

「今朝、ここで初めてお会いして、カッコイイなーって思って、同僚連れてまた来ちゃったんですよー」

「……え?」


……あ、そういう事?


いくら鈍感な俺でもこの女性達の考えが理解できた。


「イヤ、あの……」


なんだよ、パン買いに来たんじゃないのかよ。


もういい加減ガマンの限界が来てたので営業スマイルも封印した。


「あの、俺、嫁いますんで」


「…………え?」


とたんにその場が凍ったように3人が絶句した。


「すごく、心から愛してる嫁がいますので、そう言ったお誘いはお受けできません」


無表情でキッパリと言い放った。


「え……」
「そんな……」
「ショック……」


なにがショックか知らねーけど客じゃないのならもういいよな。



「申し訳ないですが、パンを購入されないのでしたら失礼します」


俺はそう言ってトレーとトングを返却棚へなおしてレジへ戻った。


女性達はもれなく肩を落として帰って行った。



ドアベルが鳴り終わったとたん大きく息を吐く。



「っ、はぁーーー……」


なんだよ、パン買ってけよ。

めっちゃおいしいのに。




「翔くん、かーっこいー」

急に背後から声がしてビクッとして振り向くとニヤニヤしてる智くんがいた。

さらにその後ろに……


「雅紀!?いつの間に!?」


雅紀が智くんの後ろでジトーっとした目を俺に向けている。


「翔ちゃんが女の人達と仲良くパン選んでる時だよ。入ってきたの気づかなかったでしょ」


低い声でボソボソと言う。



ヤベ……雅紀、めっちゃ怒ってないか?


「なっ、仲良くなんてしてねーし!
ちゃんと断ったし!」


「ははは!翔くん、めっちゃアセってるし!
まーくん、許してやれよー」

智くんが楽しそうに雅紀に向かってそう言う。


「まぁ、ね。ちゃんと嫁がいるって言ってくれてたしねー」


さっきの無表情が一転、ニコニコしながらそう言ってくれたので心からホッとした。


「『俺にはすごく、心から愛してる嫁がいますので』って?ひゃー!かっけーなぁ!翔くん!」

「あ、いや……あの……」


めっちゃ聞かれてるじゃん!


恥ずかしくてアセってると、雅紀がトコトコと俺の前まで歩いてきた。


「……翔ちゃん。
嬉しかったよ、そう言ってくれて」


そう言って俺の腕の服をキュッと掴む。


「雅紀……」

「最初、女の人達と仲良く話してるからムッとしたけど、翔ちゃんちゃんと断ってくれたもんね?」

「あっ、当たり前じゃねーか!
俺には雅紀がいるからほかの何もいらねーんだよ!」

「ふふ、ありがと、翔ちゃん」


「まぁ、それもこれも、翔くんがまーくんを足腰立たねーくらいヤリまくったから……」


せっかく雅紀といい雰囲気だったのに、智くんがそんなことを言い出すからまたアセってしまった。



「だっ、だからー!
……もっ、もう俺、ちょっと店先掃いてくるわ!」


俺は慌ててホウキを出してくるといそいそと店の外へ出ていった。



。。。。。



オレは翔ちゃんがホウキを持ってアタフタと店の外に出ていくのをクスッと笑いながら見送った。

それからおおちゃんを振り返った。


「おおちゃん、今日はホントにごめんね?
オレ、休んじゃって」

「んんー、いいよー、まーくんが悪いんじゃねーし。翔くんに足腰立たねーくらいヤラれたんだからしゃーねーじゃん」


おおちゃんは飄々とそんなことを言うから思わず顔が赤くなる。


「おっ、おおちゃん!
まぁ……そう、なんだけど……」

「んふふ、久しぶりに翔くんとゆっくり過ごせて楽しかったよー。まーくん、ありがとなー?」

「え?別に、わざとじゃ、ないよ?
ホントに……起きれなかったんだよ?」

「ふふ。まーくんからのささやかなプレゼントかと思ったけど……まぁ、そういう事にしとくかな」


おおちゃんと顔を見合わせてどちらからともなく笑い合う。



笑いながらふと店の外を見ると、翔ちゃんがまだ不器用にホウキを振り回して……イヤイヤ、ホウキで掃除をしていた。




おしまい