このままもっと vol.8 | sakurabaでいっぱい 〜SA妄想小説〜

sakurabaでいっぱい 〜SA妄想小説〜

赤さんと緑くんによるソフトな萌キュンイチャコラですが、激しめなものも書いておりますので未成年の方、男性の方はご遠慮下さい。

コメントは基本的に未承認にしております。




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。。。。。

A-side






「ただいまー」

「……あ、おかえり。ちょっと遅かったね」


リビングでテレビを見ていたカズがオレの方を向いてそう言った。



「え?あ、うん…ちょっと、今日の客…しつこくて……」

「えっ?……変なことされてないだろうね?」




まぁ、マニアックな体位は色々させられて関節にきてるけど……。



「だっ、大丈夫だよ!はい、今日のアガリ!」


オレは慌てて稼いできたお金をカズに渡す。


「あ、うん…ありがとう。
……ねぇ、まーくん?」


カズが、渡したお金を握りしめながらオレを見上げた。


「……なに?カズ……」

「まだ、やんの?こんなこと……」

「え…あ、そりゃ………」

「でも、もう俺は大学卒業してるし!
ちゃんと就職したじゃん!もう俺も稼いでるからまーくんがそんな仕事しなくても充分食べていけるし!」

「それは、そうだけど…でも、春風園にもお金出してあげたいし……」

「でも……!」

「いいの。もうね、この仕事しててもツラいことなんてないの。慣れたよ?もう」

「そんなことに慣れないでよ……」


オレと違ってカズが苦しそうに顔を歪める。





でも、ホントに平気だよ?

こんなオレでもいっぱいお金を稼げる。


それでカズも大学に行かせてあげられたし、今は春風園にも充分な額を寄付できてる。




それを思うと、こんな仕事なんて別になんとも思わない。




「だーいじょーぶだって!
オレ、がんばって稼ぐから!
そしたらもっとキレイで大きなマンションに引っ越せるかな?」


オレがあからさまに明るい声を出すと、それに反比例するかのようにカズが大きなため息をつく。




「俺は…まーくんと一緒なら、キレイじゃなくても…大きくなくても、いいから……」

「カズ……」

「まーくんがホントに幸せでいてくれたら、俺は六畳一間でも、風呂なしトイレ共同でもなんでもいいから!」

「……ありがと、カズ。
そう言ってくれるだけでオレはじゅーぶん幸せだよ?」

「またそう言って誤魔化すんだから」




だって、ホントだもん。


オレがいて、カズがいて、春風園のみんながいて、


みんなが笑ってたら、それですっごく幸せだもん。




「ねぇ、まーくん。……好きな人いないの?」

「……えっ?」



カズにそう聞かれて、ナゼかさっきぶつかったあの人の顔が思い浮かんだ。





え?なんで?

さっき、ほんの少し、会っただけじゃん。




だけど…いくら頭を振ってもあの人の顔が消えない。




なんで、かな?





オレはまだその時はその気持ちに名前がついてなかった。



「そんなの、いるわけないじゃん!
カズは?いないの?」

「あ、俺に振るなよ。
…俺はね、まーくんを嫁に出してからって決めてるから」

「嫁ってなんだよ!オレはオトコだし!」

「んふふ。でもなんかその言い方の方がしっくり来るっていうか……」

「ひどっ!カズったらひどっ!」

「ふふ、ごめんごめん。
…………あ?」


カズがテーブルのすみに置いてあるノートパソコンの画面に目をやった。




「……予約、入ったけど……」

カズが苦虫を噛み潰したように声を出す。




カズはいっつもそう。


パソコンとか、機械類が苦手なオレに変わって、オレの仕事の予約受付とか、メール送信とか、代わってやってくれてるんだけど、

いっつも不本意そうにしてる。



そりゃ毎日のように反対されてんだもん、素直にはしてくれないよね。



でも、結局カズはオレに甘いから、


モンクを言いながらもやるべきことはやってくれる。


『MFG』って名前もカズが考えてくれた。


なんでも、『製造』とか『製造業』って意味らしくて、



あくまでまーくんは機械で、感情のないまま相手するロボットなんだよ、ってカズに言われた。






「……あれ?新規だな。
なんでここを知ったんだろ……えーと、名前は、『S.S』…と」



「……えっ!?」


そのイニシャルを聞いて動揺した。




まさか……


もしかして……





オレは、さっきぶつかった人にもらった名刺をポケットから出すとそれに書かれてある名前を確認した。



堅苦しそうな会社名と『営業部主任』と言う肩書きが書かれている下に……『櫻井翔』と言う名前を見つけて……



もしかしたら、この人が……?



でも、イニシャルだけでこの人かどうかなんて、分からない、よね?


わからないけど……


もしかしたら……




そう思って、



さっきから誤魔化してばかりだった、まだ名前の知らないオレの感情の、




ハッキリとした名前がわかった気がした。






つづく……