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S-side
目の前で、相葉が、ゆっくりと、倒れた……。
まるでスローモーションの動画を見てるように。
俺の目の前で倒れたにも関わらず、俺は一歩も動くことができなかった。
「まー!まー!しっかりしろ!
大丈夫か!?」
慌てた口調で駆け寄る松潤の声にハッとして我に返る。
「すぐ医務室行くからな!
しっかりしろよ!」
松潤が相葉にそう呼びかけながら抱えあげてスタジオをあとにした。
なんだ?
……なにがあったんだ?
「……相葉さん、今朝からずっと調子悪そうだったもんね……」
俺が何もできずにボーゼンと立っていると背後でニノの声がした。
「……え?」
「相葉さん、今朝来た時から顔色悪かったし、明らかに熱がありそうだったけど……昨日帰る前までは何にもなかったよね?」
そう言うニノに、俺はなにも言えなかった。
昨夜、俺が、ムリさせた、から?
そう言え、ば……いつもより、体が熱かったような、そうでなかったような……
自分のことしか考えてなかった俺は何にも気づかなかった。
「さ、さぁ……なんでだろうな……
俺は…なんにも……」
「……ふーん……
まぁ、翔さんは……相葉さんのこと、なーんにも見てないもんね……」
必死で取り繕う俺にニノはなんとなく疑いの目を向けながらそんなことを言ってくるけど、何も言い返せずにその視線から目をそらした。
しばらく待ってても相葉はもちろん、松潤も戻ってこなくて……
残された俺たちは時間も時間だったからそのまま解散になったんだけど、俺たちメンバーは誰も控え室に戻ろうとはせず、言葉を交わすこともなくそのままスタジオでウロウロしていた。
それでも俺はまたニノに話しをぶり返されるのがこわくて、誰とも顔を合わせないようにずっとドアを見つめていた。
とたんにドアが勢いよく開いて松潤が走るように入ってきた。
え?と、思ったらいきなり俺の方へと歩いてくると、そのままの勢いで俺の胸ぐらを掴んで思いっきり頬を殴られた。
「……っぐ……!」
俺はよけることもできずにそのまま松潤のコブシを頬に受けて、倒れ込んだ。
「大丈夫か?翔くん!」
駆け寄ってきてくれた智くんに抱き起こされる。
「……いってぇ……なに、すんだよ、松潤……」
切れた唇から流れた血を手の甲で拭いながら松潤を見上げた。
「なにすんだよ、じゃねーよ……
自分の胸に手を当てて考えてみろよ!!」
そう叫んで、座り込む俺の胸ぐらを掴むとムリヤリ立たされた。
「俺はなぁ、アイツの気持ちを尊重して……
アイツの願うようにと思ってずっとガマンしてきたんだ……」
「松潤……?」
「何回言ってもアイツはアンタのことしか考えてなくて、アンタの言うことしか聞かなくて……
こんな関係だけど幸せだっ、て…アイツが言うから…だから俺はガマンしてきたんだ!」
「しあ、わせ……?」
「そうだよ!アイツは俺にはっきりと、それでも幸せだって言ってたんだ!!
でもな!!もう限界だよ!」
松潤は俺の胸ぐらをさらにグッと掴んで、
「もうアイツを解放してやってくれよ……
アイツのこと、大事じゃねーんなら……
もう放してやってくれよ!」
「おい、松潤……ここでそんな話しはマズい……
誰か来る前にやめろ」
智くんが俺と松潤の間に入り込んできて俺から松潤を離した。
「なんかよくわかんねーけど……松潤も落ち着け。
そんな様子じゃ話せるもんも話せねーだろ。
翔くんも、そのキズ、診てもらおう」
「イヤ……こんなの手当てなんかしなくたって大丈夫だよ……
悪りぃ、俺、先帰るわ……」
口元の血を指で抑えながらスタジオを出ようとした。
「逃げんのかよ!
ちゃんとまーと向き合えよ!
卑怯者!!」
俺の背中に松潤の怒号が浴びせられたが、俺にはなにも言い返すことも、振り返ることもできなかった……。
つづく……