老後のために、いまは打たない | 元パチンコライターのブログ

老後のために、いまは打たない

以下は日本遊技関連事業協会(日遊協)の全国パチンコ・パチスロ論文・作文コンクールで奨励賞を頂戴した文章です。


<作品タイトル>
私がパチンコを打たない理由

老後のために、いまは打たない


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 私には、夢がある。
 それは、還暦を迎えた頃には一線を退き、好きなパチンコを思い切り楽しむこと。お気に入りのホールに毎日通い、好きな機種を打ち続けること。大学を卒業し、社会人になって以来、この夢の実現のために仕事を続けているようなものである。
 しかし、いまはパチンコを打つことはない。まず、空き時間にパチンコを打つことはなくなった。
 小一時間ほど暇を潰す必要が生じた時、以前ならば迷わずパチンコ店に向かっていた。しかし、いまはパチンコを打つことはない。
 いわゆる「1パチ」のホールが、よく「ゲームセンター感覚で楽しめる」ことをウリにしているが、本当にそうだろうか。50分ほど打ち続け、確変を引いてしまったら、どうすればいいのか。
 私は過去に2度、確変中の台を泣く泣く放り投げ、商談相手との待ち合わせ場所に向かったことがある。
 まさに断腸の思いで遊技を終了したにも関わらず、従業員の方は冷めた目で私を見ていた。
「確変中の台を止めるなんて、なんてもったいないことをする人なんだろう」
 従業員の目は、そう語っているかのようだった。
 私の学生時代は、羽根モノと言われる種がまだ多数設置されていた時代だった。大学へ向かうバスの乗り場前にあったパチンコ店で、朝、1時間ほど打ってから通学するのが日課だった。たとえデジパチを打って時間ぎりぎりで大当りを引いたとしても、消化に要する時間はせいぜい3分程度。5分前に止めれば、まず遅刻することはなかった。
 確かに確変・時短による連チャンは魅力的ではある。しかし、打ち手がマイペースで遊技できないというデメリットがあることを、メーカーの方などには、ぜひとも知ってもらいたいと思っている。
 現在推奨している「遊パチ」ならばなおさらのこと。ゲームセンターならば止めたい時に止められるわけで、「1パチ」「遊パチ」の普及の鍵は、台のスペックが握っているのではないだろうか。
 私には老後、パチンコを好きなだけ楽しみたいという夢がある。
 しかし、いまはパチンコを打つことはない。最近は、終日打ち続けることもなくなった。
 週末の土日、以前ならば迷わずパチンコ店に向かっていた。しかし、いまはパチンコを打つことはない。
「●●の色が●●だったら激アツ!?」
「背景に●●がいれば激アツ!?」
 私は、パチンコ店に「間違い探しゲーム」をしに行っているのではない。
 そもそも、それらの情報を勉強しなければ楽しめない現状のゲーム性は、ライトユーザーをないがしろにしているのではないだろうか。
 こうしたゲーム性を有する台を開発するメーカーが1社だけならば許せる。それがそのメーカーの独自性のある戦略であり、固定ファンが付いているのならば構わないだろう。
 問題は、ほとんどのメーカーが同じことをしていること。まるで法律で決めているかの如く、個性のない台ばかりなのが現状だ。
 デジタル回転中にはステップアップ予告とミニキャラ、あるいはボタンを押してセリフを出現させる演出が発生。ステップアップ予告ではキャラの模様が違えばチャンスアップ。セリフの文字は赤ならばアツい。そして疑似連続演出が発生し、リーチ後に群予告か背景予告が出現すれば信頼度がアップする。その後はストーリー性のあるドラマが展開され、ハズれた後に何らかのキャラが出てきたら復活パターンで大当り。
 この文章で、現在市場に出回っているほとんどの台を説明できるはず。見た目は違っても中身は同じ。このような台ばかりを開発していているから、パチンコが飽きられてしまう。
 かつてのパチンコ台は、たとえスペックが大同小異だったとしても個性があった。SANKYOならばFパワフルの9マス8ラインデジタルやFクイーンのドラム、西陣ならば花満開の桜のドット。ニューギンのベルト、マルホンのドット表示も味があった。
 それが、いまや似たようなタイアップマシンばかり。
 もしも大好きな原作ドラマがパチンコになったとしても、私ならDVDを全作借りて、自宅で観ることを選択する。わざわざ貴重な休日に、名シーンの切り貼りだけを強制的に観せられるのならば、自宅で観た方がよほどいい。
 だから、いまはパチンコを打つことはない。
 私には、夢がある。
 それは、還暦を迎えた頃には一線を退き、好きなパチンコを思い切り楽しむこと。お気に入りのホールに毎日通い、好きな機種を打ち続けること。
 あと20数年が経った頃、パチンコは相も変わらずアニメや映画のタイアップばかりだろうか。打ち手が止めたい時に止められて、ちょっとした時間潰しに利用することができる台は、皆無だろうか。
 私は、そうは思わない。
 ファン人口が急速に減少しているのは、不景気のせいだけではないことを、パチンコ業界に携わる人々が気付いていないわけがないから。それぞれのメーカーが個性のある台を作ればいいだけの話なのだから。
 連チャンを楽しみたい人、のんびり楽しみたい人、短時間遊びたい人、タイアップ台を打ちたい人、シンプルな台を打ちたい人、玉の動きに一喜一憂できる台を打ちたい人――それぞれのニーズを満たす台を開発すれば、メーカーだってパチンコ店だって差別化を図れる。そもそもどの店に行っても設置されている機種が同じという現状こそが異常ではないか。
 これからしばらくして、パチンコはきっと必ずいい方向へと変わってくれると信じている。
 パチンコの本当の楽しさは、こんなものではないはずなのだから。
 少なくとも私にとっては、生涯の夢なのだから。