なぜ工務店は企画住宅に手を出したがるのか。

なぜローコストメーカーが突如デザインも売りにするのか。

 

一目置かれる工務店は誰が見てもその会社の【売り】がハッキリと分かる。

軸がブレていない。手広く営業展開していない。

 

アメリカの航空会社、サウスウエスト航空は競争が厳しい航空業界で

成功した良い例だ。

 

1970年代前半、大手航空会社が路線を拡大する中、

サウスウエスト航空はあえて2都市間のみを単純に繋ぐ路線に徹底した。

 

機内食提供をやめ、座席指定も廃止しコストダウンにこだわった。

 

もちろんこれらの行動にはリスクも伴った。

既存の顧客を逃すかもしれないし、機内食を食べたい人もいるだろう。

 

しかし創業者のハーバード・ケレハーは明確なビジョンを持ち

徹底的に不要なものを切り捨てた。

 

当初はこのやり方は同業者や評論家の間で酷評を受けたが

2年も経つと、経営は軌道に乗り大きな利益をあげるようになった。

 

それを見ていた他の航空会社がやり方を真似し始める。

 

しかしサウスウエスト航空のように徹底したビジョンはなく

中途半端に真似をしたような粗末なものだった。

 

従来の通常路線を残しながら、サウスウエスト航空のような低料金路線も並行させた。

 

結果的に中途半端なこのやり方では思ったほどコストカットもできず、

サービスの質の低下ばかりが目立ち、競争力を失っていった。

これによる損失額は数百億円にもなった。

 

ケレハーはこう言った。

「サウスウエスト航空は格安航空会社だ。それ以外の何者でもない。

金のかかるオプションはこの会社の本質から外れている。」

 

さらにこう続けた。

「あらゆる選択肢を見たうえでこう言わなくてはならない。『お断りします。うちの目指す

目的に貢献しないことをいくらやっても意味がないんです』 と」

 

 

このサウスウエスト航空の話からはとても重要なことを学べる。

「何かを得ようとするには何かを捨てなければならない」ということ。

 

二兎を追うものは一兎をも得ず

 

 

注文住宅の受注が好調になると、手間を省いた企画住宅に手を出したくなる。

しかし顧客が求めているのはこだわりの注文住宅かもしれない。

 

当初はデザインや性能は二の次だったローコストメーカーが

突如おしゃれな高級路線の住宅も売り始める。

だが顧客はそんなことよりさらなるコストカットを望んでいるかもしれない。

 

 

手広く事業展開するとそれぞれの分野に力が分散される。

別方向に向いた力のベクトルが互いに引っ張り合い、

結局その場から一歩も進まない。

 

しかしその分散された力を一方向に向ければ

強い力で突き進むことができる。

 

 

健康的で安くてカッコよくて高性能で高耐久な家などない。

 

「何でもできます!」

「何もかもが中途半端です!」と言っているのと同じなのかもしれない。