キャット・ファンタジー②飛翔そして墜落(後編) | たぬきのしっぽ ☆彡

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★チンチラたぬきと
メインクーンきつねの生活日記♡

 
*☆*:;;;:*☆*:;;;:

<埠頭>
ついに大将がやってきた。
守と坂田君は立ち上がった。

坂田君が
道路の向こうのお店を指さしながら
守の耳元でささやいた
ボクが「行け」って
声をかけたら
猫の箱を抱えて
まっすぐあそこのコンビ二まで
全力で走るんだよ。

え?と守が驚くと、
ボク空手の黒帯持ってるんだ、と
坂田君がはにかみながら答えた。

「ありゃ、クラス委員の登場かよ」
と大将。
「にゃんですか?
にゃにか大きな事件でも
起こったんですか?」と
ふざけてきくフトシ。
大将とフトシは成長が早く
守と坂田君よりもずっと大きかった。
こんなちびっこたち
目じゃない、
にやにやと笑いながら
こちらに歩いてくる。

「その子猫たちを返してくれ、
その箱をよこせ」

守は
フトシの抱える段ボールを指さして
声を張り上げた。

返してもいいけどよ、
その前に
お前にしてほしいことがある、と
大将は守の前に
立ちはだかって言った。

まず、そこの海に飛び込め。
飛び込んだら、この子猫は箱ごと
放り投げてやるから。

守と坂田君は
思わず後ろを振り向いた。
11月の海が鈍色に輝いていた。
「飛び込めるわけないだろう?
今、何月だと思ってるんだ?」
坂田君が怒鳴った。

へえ、お前でも、
怒ることがあるのかい。
でもさ、そんな態度オレにとって
いいのかい?

 
  
  


坂田君はフトシにそう言われて
一瞬ひるんだ。
その時、
車がキキッと急停車する音がして
女の子の叫び声が聞こえた。
さらさだった。
運転手は「気をつけろ!」と怒鳴って
走り去った。

「おにいちゃん!」
さらさは守の野球用の金属バッドを
両手でずるずると
引きずりながら歩いてくる。

「さらさ!なんで来たんだ!」
守が駆け寄ろうとするのを
フトシがはばんだ。
逃がさないんだよ、お前は。

「おにいちゃん、
さらさが助ける!
おにいちゃんも
子猫ちゃんも
さらさが助けるの」

大将がげらげらと笑いながら
 さらさの方に歩いていく。
さらさはまだ道路を渡り切れず、
ほぼど真ん中にいたが
大将をみとめ
全力で
バッドを持ち上げようとしていた。

こいつが
私から猫をとった。
お兄ちゃんを
いじめる悪いヤツ。
私がこらしめてやるんだ。

「さらさ やめろ!」
守はフトシを振り切って
道路に飛び出した。

坂田君は
フトシから子猫の箱を奪い
フトシに蹴られて転びかけた。
そのはずみで箱から子猫たちが
箱から飛び出して道路の上に
逃げ出した。
あぶない、車が来る!
やめろ、さらさ!
みんながほぼ同時に
対向車に気づいて
叫び声をあげた。

 


いきなり
竜巻のような風が吹いた。
その場にあるものすべてを
上空に巻き上げた。

なんだ、これは?
さらさ、どこだ?
「おにいちゃん」と叫ぶ声が
どこからか聞こえた。
「さらさ!」
自分の声が耳の中で響き渡った。
守の体は
ぐるぐるとまわっていた。
回りながら上空にのぼっていく。

下の道路の真ん中に
大将が倒れているのが
見えた。
その近くで
箱を抱えた坂田君が
途方にくれた顔をしてる。
さらさは?
子猫は?
さらさと
子猫たちはどこだ?

だんだんと意識が遠のいていく。
さらさ、さらさはどこだ?
下界のどこにも見えない。
虹色の光が目を射た。
まぶしくて目が開けられない。
あ、太陽だ、と思ったとたん
今度は体がどんどん落ちていく。

ぐるぐると
今度は反時計回りに
まわりながら落ちていく。
さらさ、無事でいろよ。
無事でいろよ、絶対!
これ以上
お父さんを悲しませるな。
守はいつしか
気を失った。

*☆*:;;;:*☆*:;;;: 

 
 
 
<海岸の家>

気づいた時、
守は知らない家の中で
板の間に
横たわっていた。
ボクはどのくらい
こうしていたのだろう。
波の打ち寄せる音が聞こえるから
海辺にあるらしい。
土間のある、古い家だ。

起き上がって
窓から外を眺める。
きれいな海岸が見えた。
白い砂浜が広がっている。
あ!あれは、
さらさ だ!
海岸にうずくまる少女をみとめ、
守は慌てて外に走り出た。

「さらさ!」
「お兄ちゃん!」と
さらさが駆け寄って来た。

「大丈夫か?」
「わたしは大丈夫」
さらさは
両手でボロボロになった
段ボールの箱を抱えていた。
フタをあけると
中には抱き合うように
二匹の子猫が眠っていた。

 

7匹いたのに
2匹になっちゃった・・・・・・。
でも大丈夫
この子たちは生きている
きっと
仲間も生きてるよ。
探さなくちゃ。

そうだね、と
さらさには答えたものの
守は考え込んでいた。

みんなはどうなったんだ?
ボクたちはどうしてここにいるの?

ここはいったい、どこだろう?
助けを呼ぶにしても
どうしたらいいんだろう?

とにかく
あの家で休もう。
守はさらさと子猫を連れて
家に戻ることにした。
食べるものが
何かあるといいけど。

「おにいちゃん、早く」
さらさが 先にたって歩き出した。
その笑顔を見て
守は気をとりなおして
歩き出した。

もしかしたら
あの家に
ここがどこか わかるものが
あるかもしれない。

*☆*:;;;:*☆*:;;;:

 

<ひいらぎ>

公園に子猫は一匹もいなかった。
家に戻ってくると
ひいらぎは 一匹だけ
父の西岡が持ち帰った子猫を抱いて
その頭をなでた。

ごめんね。
仲間を助けられなくて。
でも、これからもずっと
探すから。
お前は大切に
私が飼うから。

その夜、ひいらぎは夢を見た。
青い湖の近くに
広い草原があり
猫たちが
元気に走りまわっている。
太陽は沈みかけ
あたりは茜色にそまっていた。
遊んでいた猫たちは
家路につくらしい。
ひとまとまりになって
去っていく中
一匹だけ、
こちらを振り向いた。
白い、
シルエットの美しい
大人の猫だった。

ひいらぎさん
ワタアメを拾ってくださって
ありがとう。
感謝しています。

えっ、と
ひいらぎは叫び
その瞬間、
夢からさめた。

ふと見ると
ベッドがわりの
小さな箱に入れたはずの
白い子猫が
ひいらぎのかけぶとんの上で
すやすや寝ていた。

ほんと
ワタアメみたい。
ひいらぎは
クスリと笑った。
名前、
ワタアメでいいね。

すると不思議なことに
子猫は薄目をあけて
ミャと 小さく鳴いた。


<<次週に続く>>



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