[平成18年度短答式試験第4問]特許協力条約に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
[枝3]発明の単一性の欠如に関して追加手数料を支払わなかったため、請求の範囲の一部について国際調査がされていない国際出願が、国際予備審査請求時に特許協力条約第34条(2)(b)に規定する補正を行って発明の単一性を満たすものとなった場合、国際予備審査機関は当該補正後の全部の請求の範囲について国際予備審査を行わなければならない。


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語尾が、「全部の請求の範囲について国際予備審査を行わなければならない。」となっているが、そうとも限らないだろう。。なので、×っぽい。そして、実際の解答も×で正解らしい。さて、その根拠は。。


ある参考書によると、PCT規則67.1である。67.1には、国際予備審査を行わなくてもよい例が記載されている。もちろん、これに該当すれば、国際予備審査を行わなくてもよい。したがって、×を導き出すことができる。


でも、この問題に関しては、発明の単一性が事後的に満たされることになるので、PCT規則66.1(e)の規定が問題になると思います。PCT規則66.1(e)には、「国際調査報告が作成されていない発明に関する請求の範囲は、国際予備審査の対象とすることを必要としない。」と規定されています。これによると、追加手数料を納付せずに、国際調査報告が作成されなかった請求項については、国際予備審査が行われないことになります。したがって、×を導き出すこともできます。


さて、このPCT規則66.1(e)の規定は、実務的には、やっかいだと思います。

例えば、国際調査報告の段階で、10個の発明を含むとして、高額の追加手数料の納付命令を受けたとします。たいてい、この時、1個目の発明に特許性が認められない旨の通知も途中段階の審査結果として一緒に受けます。でも、そんなに高額な追加手数料を払うことができないので、支払いませんでした。そのため、1個目に記載された発明のみが審査されました。当然、途中段階の審査結果がそのまま適用されて、特許性がないという内容になります。その内容からして、2個目、3個目、・・・も特許性がなさそう。でも、8個目ぐらいになると、1個目の発明からは、かなり遠い。34条補正で、8個目の発明について、審査を受けてみたい。

前置きが長くなりましたが、こんなケースがあり得ます。こんな場合、PCT規則66.1(e)によると、国際調査報告が作られていないことを理由に、34条補正で8個目の発明のみにしても、国際予備審査が行われないことになりえます。果たして、本当に、国際予備審査は行われないのでしょうか。


66.1(e)の趣旨に照らして検討してもいいのですが、国願法施行規則61条1項3号に、予備審査での発明の単一性と、国際調査報告での発明の単一性とに関する規定が記載されています。参照する条文が多く、読みにくい条文ですが、予備審査で発明の単一性がなく、予備審査で追加手数料を払わなくても、国際調査報告で追加手数料を納付して審査された請求項については、予備審査が行われる旨が規定されています。すなわち、日本国では、66.1(e)の規定を「発明の単一性にかかわらず、国際調査報告が作成された請求項については予備審査を行う必要がある」として扱って頂いているようです。これは、出願人側としては、大変ありがたい扱いです。


まわり道をしましたが、平成18年第4問枝3が、日本で予備審査が行われる場合に限定すれば、○とすることもできると思います。それでも、審査対象の規定も考慮すると、必ずしも審査されないので、×ですね(国願法施行規則42条、70条3項)。


・・・上記の判断について、裏をとっているわけではありません。信用するかどうかは、自身でご判断ください。