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『川崎くん、これ、見てよ』

鼻息荒く、三田村邦彦は一枚の

紙切れを広げて見せた。

そこには『新宿大舞踏祭』という文字

があり、さらにダンサー募集という

文字も並んでいるのが、川崎麻世

には見えた。


『何です?これ』

いきなりインターネットのホーム

ページから印刷したものらしい

紙切れをいきなり見せられたのだ、

川崎麻世のそんな覚めた反応も

極めて当然と言えよう。

しかし三田村は興奮を隠せなかった。

さらに彼は捲くし立てるように

『これに俺たちで、出るんだよ、出ようよ

川崎くん』

と言った

すでに三田村はこの『新宿大舞踏祭』と

いうお祭りに『阿波踊り』で出場する

決意を固めていた。

そしてその舞台には極めて当然のように

川崎麻世もまた同志として、三田村の

頭の中には共に『阿波踊り』を舞う姿が

あった。

さらにその時不在であったため、あく

まで、おまけではあったとはいうものの

現在四国を暢気に彷徨い歩いている

お遍路の途上にあった菅マイナス8万点

前首相の姿もそこにはあった。


こうして、これまで見せたことなどない、

興奮気味に鼻息荒く『新宿大舞踏祭』

という何だかよく分からないイベント事

に『阿波踊り』で共にエントリーしようと

誘いかけてくる三田村邦彦の情熱に

圧倒された川崎麻世はその誘いに

応じたのだ。

いや、それは応じたというよりは半ば強引

に首を縦に振らされたと言ってもいいような

ところではあったのだが。


彼らはその時、カラオケボックスにいた。

そこで、この『新宿大舞踏祭』への出場

を決めた彼らはその後、決して唄など、

決して歌うことなく、当然のようにそこで

『阿波踊り』を舞い始めことになった。

三田村は急遽このカラオケボックスに

やってくる前に家電ショップに立ち寄り

彼が所有している携帯音楽プレーヤー

に取り付けるスピーカーを購入して

板が、そのスピーカーから流れる

『阿波踊り』の調べが低く、そのカラオケ

ボックス内に流れ、それにあわせて

2人は踊った。

三田村にとっては、それは喜びの舞い

でもあった。


(何だ、三田村さん、今日はやけに

テンション高いな!!)

川崎麻世は三田村がこれまで見せなかった

姿を見て、やや苦笑い気味だった。

しかしここで麻世はこの『新宿大舞踏祭』

などという大げさな名称のお祭りへ、

三田村の誘いで半ば強引にエントリーする

ことになったことで、彼の頭に思い浮かんだ

人物がいた。

それは妻の川崎カイヤだった。

そうして彼はこう考えた。

(あの女、こうなったら、オレが目にもの

見せてやっからな!!!)


そのうち川崎麻世も鼻息を荒げ、その踊りは

熱を帯びていった。

こうしてカラオケボックスという狭い空間で

2人の男は情熱の『阿波踊り』を繰り広げること

になったのだった。