「そうじゃない」
目の前に圧倒的な存在感
声はどこまでも穏やかで
でも瞳は笑っていない
真っ直ぐ見つめられて
まったく動けない
どうすればいいのか全くわからない
主体が自分に無い事だけは明確にわかる
必死で感覚を探る
常に主体的でなければならない
この言葉を大切にしてきたつもりだ
なのに、いま僕のもとに主体はない
目を閉じて感覚を探ろうとすると
それもたしなめられる
瞳を閉じては何者とも戦えない
その通りだ
瞳を開き、必死で感覚を探ると
僅かに、ほんの僅かに主体の位置を感じる
それを丁寧に捉えて
ぐっと自分の元に引き寄せる
みぞおち辺りでそれを感じ続ける
不意に動くことができるようになる
ごく自然に滑らかに動き出す
感覚がほつれないよう集中し続ける
主体は常に自分にあり、流れるように自然体でなければならない
「そう、すごくいい」
そう言ってその人は僕から離れていった
どうやら僕は生き延びたようだ
例えば、ただ立てぬ者は一歩すら歩む事ができない
この世界はとても素晴らしいし
だからこそとても厳しい