地方の名産物を集めた百貨店の物産展が変化している。インターネット上の通販と連携して新たな顧客の取り込みを図ったり、これまでにはない低価格の弁当も発売。百貨店の売り上げ低迷が続く中、比較的堅調な物産展を充実させることで、集客につなげたい狙いがあるようだ。(森本昌彦)

 ◆80分待ちの店

 「いらっしゃいませ」。3月25日午前10時、東武百貨店池袋店10階に店員の声が響いた。開店直後にもかかわらず、フロアはあっという間に人の波があふれた。

 客の目当ては、この日始まったばかりの物産展「楽天市場うまいもの大会」だ。楽天(東京都品川区)が主催し、東武百貨店(豊島区)、中小企業基盤整備機構が共催。インターネット商店街「楽天市場」の人気商品を集めた催しで、厳選した53店のほとんどが同百貨店の物産展への出店は初めて。同社催事部催事企画担当の下平哲也さんは「リアルの百貨店とバーチャルの楽天市場が組んだエポックメイキングな試み」と話す。

 ネット上や地元でしか買えない商品が購入でき、ネット上ではできない試食も可能。いわばネット通販と物産展の長所を組み合わせた試みだ。百貨店にとってもネット上の人気商品を販売することで、集客につなげることができる。初日は最大80分待ちという店舗もあったほか、売り上げは当初予想より25%多かった。

 ネット通販との連携では西武池袋本店が1月21~27日、「Yahoo!ショッピング」の人気グルメ店を集めた物産展を開いた。約20万人の来場者を集め、目標の1・6倍の売り上げを記録した。好評を受けて、セブン&アイ・ホールディングス(千代田区)とヤフー(港区)は「お取り寄せグルメ選手権」を開催。3月24日には西武池袋本店に選手権のアンテナショップを設けた。

 ◆タイムセール

 他業種との連携だけでなく、これまでの物産展にはなかった商品や企画も登場している。

 日本橋高島屋が3月10~22日に開いた「大いわて展」では、食材の切れ端や規格外の素材などの部位を利用した価格400円の「エコ弁当」が登場。「今までの物産展では考えられない価格」(同店販売第7部の小野田剛史さん)といい、販売直後に完売した弁当もあるほどの人気だった。

 今月21日からの「大九州展」でも大いわて展と同様、カステラを作る過程で切り落とした端の部分を詰め合わせた「かすてら切れ端」(400グラム、525円)などお得な商品の販売を予定。このほか、開店直後には来られない人を対象に、夕方のタイムセール「5時から市」も開く。

 関西地区の百貨店も物産展は大人気だ。阪神百貨店梅田本店(大阪市)が昨年8月に開いた、全国から庶民的な味を集めた「ご当地グルメ甲子園」。大阪府高槻市の「うどんぎょうざ」などその地域でしか知られていない料理も登場し、評判を呼んだ。

 各百貨店とも他店との差別化を図るため、ユニークな試みを続けている。

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 ■比較的売り上げが堅調 入店者数も増える傾向

 各百貨店が物産展の充実に力を入れる背景には、比較的売り上げが堅調なことに加え、全体の売り上げ増につなげたい狙いがある。

 日本百貨店協会の発表では、平成21年の全国百貨店の売上高は前年比10・1%減(既存店ベース)の6兆5842億円で12年連続の前年割れ。そんな中、物産展については、高島屋(東京都中央区)宣伝部の小倉伸之さんが「(催しによって)波はあるが、比較的堅調」と話すように、ある程度の売り上げが期待できる。人気物産展の開催中は入店者数が増える傾向にあり、集客の目玉となっている。

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