前回までのあらすじ

前に書いたシリーズ、今回使用する設定があります←ダーカー因子云々のお話

 

 

↓ではどうぞ

 

 

―――――第2基地―――――

 

ヒューナル「良いぞ良いぞ、楽しいぞアークスよ!!」

 

開始10分、早くも3人に消耗の色が滲み始めていた。

グリンダがヒューナル間合いの中で格闘戦を展開し、アルアスが防御の隙間を縫って狙撃、イデが更に追撃してヒューナルに攻撃のターンを回さないよう立ち回る。

だが翻弄しているのは見かけだけだ。何度となくヒューナルの攻撃がグリンダの皮を削いでいるし、アルアスの狙撃も的確に頭部に当てているのに水鉄砲程度のダメージにしかなっていない。イデの高速の打撃もヒューナルの反射神経を上回るには足りない。

ヒューナルの体力は削れていないのに、アークス側は最高の集中力を維持し続けなければならない。1発でも攻撃を防御し損ねたら、1発でも弾丸が狙いから逸れたら、1発でもカウンターを合わせられたら、一巻の終わりである。

 

アルアス「どうする?このままじゃじり貧だぞ」

 

アルアスは暴れまわるヒューナルに狙いをつけつつ、作戦の変更を提案する。

 

グリンダ「・・・」

イデ「私としてはそれなりの画が撮れて満足してますよ?グリさんがいて『それなり』というのは不満ですが、っね!」 

 

グリンダは珍しく無言、あくまで撮影メインのイデは何の足しにもならない答えを返す。

 

アルアス「イデさんはもうそのスタンスがベストなんだとして、グリさんどうした?」 

グリンダ「・・・んー。1つ、被害を小さくして足止めできる方法があるんですが」

アルアス「あんたが1人で何とかするって言うんだろ?知ってるし却下だ」

グリンダ「(´・ω・`)」

イデ「確かにグリさん、弟子を取ってから丸くなりましたよねえ。以前ならこんな連携無視したはずです」

アルアス「3人でようやく互角になれるあいつに、1人でどう対抗するんだ?確かにあんたは連携苦手だけど、1人でこの3人と同じだけのことができるとでも言いたいのか?」

 

アルアスの指摘に、同じく作戦の変更を検討していたすずも同意する。

 

すず「グリさん、そのわがままを通すわけにはいかないよ。いくらあなたでもこいつを1人で相手するのは―――」

 

ゴポッ ベシャッ

 

瞬きすら許されない攻防の中、突如グリンダの口から大量の鮮血が吐き出される。

 

イデ「グリさん!?そんな、まともに当たった攻撃は・・・うわっ!!」

 

流石にイデも動転し、ヒューナルの攻撃をかわし損ねて吹き飛ばされる。

 

ヒューナル「む?・・・グリンダと言ったな?今まではフォトンのせいで隠れておったが、貴様の内にも見えるぞ、昏い化け物がな」

グリンダ「あちゃ・・・思ったより早かったですね、限界・・・コホゲホ!」

すず「―――1人で相手するどころかあなたが1番重傷じゃない!何で早く言わなかったの!?」

 

すずの言葉に、グリンダは荒い息で応じる。

 

グリンダ「攻撃をもろに受けたわけじゃないんですよ・・・ゲホッ、私のダーカー因子への耐性が極端に低いだけでして。掠った際のダーカー因子のダメージが一気に来たようです」

 

アークスのダーカー因子に対する防御には2種類ある。

1つは、アークスの認定試験でも計測されるフォトン適性。ダーカー因子を直接に浄化するものであり、グリンダのフォトン適性は全アークス中屈指の高さだ。

 

もう1つは、試験では計測されないダーカー因子耐性。フォトンで浄化しきれないほど大量のダーカー因子に対する耐性だ。計測されない理由は、この耐性が必要になるほど戦いを繰り返すアークスはまずいないこと。グリンダはこれが極端に低い。

ちなみに計測した理由は「どのくらい連続してダーカーを倒し続けても良いか知りたい」だったそうだ。

 

グリンダは他に類を見ないほど戦い続けてきたが、攻撃をかわす、掠ってもフォトン適性の高さで浄化、そもそも敵に攻撃される前に倒すなどしてダーカー因子耐性の低さを補ってきた。しかし今回の禍王の攻撃は、グリンダでもかわしきれず、浄化しきれないほどのダーカー因子の濃度だった。それは少しずつグリンダの体を蝕み、ついには内臓器官にまで達した。

 

グリンダ「・・・捨ててください。私を連れて逃げ切るなど不可能ですから。何より、ヒューナルは私に興味を示している様子。残るなら私が適任でしょう」

 

まともに立つことすらできなくなったグリンダは、彼我の戦力を比較して自らを捨てて逃げるように進言する。それに対しすずは


すず「そん、・・・~~っ!

 

そんなことできるわけないでしょ!?と吹き出しかけた感情を押し殺し、冷静に判断を下す。

 

すず「アルアスさんとイデさんの2人は即座に撤退して。グリさn、グリンダはおいて行って構わない」

アルアス「分かった。・・・ごめんな」

イデ「不完全燃焼ですが・・・仕方ありませんね」

 

2人とも不満は大いにあるだろうがおとなしく従い、撤退していく。重傷者を庇いつつ戦う余裕はないのも確かだったから。

さらにすずは撤退の指示の後、即座にグリンダへ救助の手を回す。

 

すず「後方支援班に連絡。第2基地で重傷者あり。敵性反応が消失したらすぐ連絡するから、第2基地周辺で待機しといて!グリさん、何か手があるんだろうけど・・・万が一死んだら骨はフランカカフェに出荷だからね?

グリンダ「・・・はい。あ、テルーさんには私がこうなってるの、内密にお願いしますね?相当取り乱すでしょうから」

 

 

 

ヒューナルは、逃げた2人を追わなかった。強者2人よりもなお興味深い者が目の前にいる。

 

ヒューナル「逃げるか・・・まあ良かろう。それより貴様、いつまで寝そべっている?」

グリンダ「・・・今立ちますよ。そして最後に立ってるのも私です」

 

ヒューナルの言葉にグリンダは、血と砂にまみれた顔に笑顔を浮かべ立ち上がる。

フォトンとは対極の、昏い瘴気をその背に背負って。

 

ヒューナル「この瘴気・・・以前闘った、テルーとかいう小娘と同じ・・・?」

グリンダ「半分正解です。ダーカー因子を持つことは同じです。私は彼女ほど膨大な量は出せませんがね。それに、元になったダーカーも違う」

ヒューナル「良いのか?瘴気への耐性がない貴様がそれを解き放つなど、自殺行為としか思えんが」

グリンダ「心配ご無用。ダーカー因子の再生能力で治癒しますから。私の体がダーカー因子の作用による負荷に耐え切れずに朽ちるまではね」

ヒューナル「ならば時間がないな。とっとと始めるぞ・・・グリンダ

グリンダ「そうしていただけるとありがたいです・・・ファルス・ヒューナルさん

 

挨拶が終わり、両者が砂を蹴り

 

タンッ ガギィンッ

 

グリンダのスサノオとヒューナルの足刀がぶつかり、テルーのようにへし折られる―――

 

ヒューナル「ぐっ・・・!?」

 

ことなく、足刀に刃を食い込ませる。グリンダの瘴気は全身のみならず、武器にも更なる強度をもたらしていた。テルーのように大量の瘴気を垂れ流すような真似はできないが、その分扱いにおいてはグリンダに一日の長がある。

 

グリンダ「痛がるなんて、まだ余裕がある証拠ですねえ・・・もっと必死になってくださいよ

 

ヒューナルが痛みに身をすくませたのを見逃さず、グリンダがラッシュをかける。肩、肘といった関節部を斬りつけてガードを下げさせ、がら空きの喉に刀を突きこむ。吹き出した返り血とダーカー因子の負担で白かった髪を紅く染め上げ、グリンダはカタナを引き抜きざまコアを叩き割る!

 

ヒューナル「チィッ!!」

 

ヒューナルが身を丸め、コアの周囲に瘴気を集中させてグリンダの刃を防御する。

 

グリンダ「おやおや、防御するなんて珍しい。そんなに痛かったですか?」

 

華麗に後方宙返りを決めて着地したグリンダは、ヒューナルが防御に回ったことをからかうように笑いながら再び突進する。

 

グリンダ「そら!かわします?守ります?」

 

ギュイン フォンッ

 

ヒューナル「この攻撃・・・!貴様もしや」

 

グリンダが突進中に刀を振り、黒い衝撃波を飛ばす。近接攻撃しかしてこないと考えていたヒューナルは不意を突かれ、それでも驚異的な反射神経で全て撃ち落とす。

 

グリンダ「おしゃべりはこれをしのいだ後にしてくれませんか?」

 

グリンダは衝撃波を対処させる間に側面に回り込み、開幕から何度も弾かれたグレンテッセンを放つ。もはや刃の閃きすら見えぬ抜刀速度、音をも置き去りにして刃が走る。

 

ヒューナル「ちょこまかと、無為!!!」

 

気合とともにヒューナルがバックハンドスマッシュに似た裏拳を繰り出す。通常のアークスが喰らえば上半身がなくなるだろう一撃がスサノオとぶつかり合い、均衡する。

 

ヒューナル「・・・先の質問、答えてもらおうか」

グリンダ「分かりましたよ。圧倒的な身体能力とさっきの衝撃波に見る通り、私の因子はあなたのものですよ、ヒューナルさん。過去に封印された際に採取したのでしょうね」

ヒューナル「なるほどな。自分自身と戦えるなど極めて稀な機会だ、感謝するぞグリンダよ。ハァッ!」

グリンダ「私としても、本気のあなたと戦えるのは嬉しい限り。その力、思う存分振るってくださいね。・・・っと!」

 

ヒューナルが腕を振り切り、グリンダを後退させる。

 

ヒューナル「簡単に潰れてくれるなよ?」

 

体勢を崩されたグリンダに対し、ヒューナルが前方に宙返りしての踵落としを見舞う。グリンダはカタナでいなし、反撃のカウンターが

 

ヒューナル「愚鈍!!!」

 

回転の勢いそのままに上から降ってきたヒューナルの手刀とかちあう。

 

グリンダ「カフッ、まだです!」

 

不完全な体勢からのカウンターでは押し切られると判断し、グリンダはあえて手刀の勢いに逆らわず前方に回転、逆襲の踵落としがヒューナルの右肩口を捉える。

 

ヒューナル「ぐぉっ!」

 

普段のグリンダの筋力では何の効果もあるまいが、今はヒューナルの身体能力を模倣している。ヒューナルの鎖骨が悲鳴を上げ、形勢が再びグリンダ有利になる。

 

グリンダ「ゼッ、ヒュッ・・・もうこの優位は渡しませんよ」

ヒューナル「・・・仕留めてから言え」

 

ヒューナルが体勢を立て直す前に、サクラエンドで顔面を狙う。のけ反ってかわされた所に1歩踏み込んでツキミサザンカ、ヒューナルが地を転がって膝立ちになる瞬間、グレンテッセンで後ろに回り込む。視線が地面に向いたところを狙った動きに、ヒューナルもグリンダの姿を見失う。

 

ヒューナル「どこに―――」

 

既に地平線の向こうは薄明るく、夜の終わりを告げている。残った闇を斬り払うように、グリンダが珍しく声を張り上げる。

 

グリンダ「これで、終わりです!!!」

 

目の前の無防備な背中に向かい、全身全霊を込めてカタナを振りぬく!!

 

シャッ ブシュッ

 

死闘、決着。声もなく背中から大量の血をまき散らし、湿った砂の上に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――グリンダが

 

 

 

 

 

あ と が き

 

前回、「今回でヒューナルさんに第2基地を突破してもらう」と言ったな。

あれは半分嘘だ。これでヒューナルさんは第2基地を突破したも同然だし多少はね?(震え声)

 

グリさんは蛮族、今回のお話でそれだけは皆さんにご理解いただきたいなと思って書きました(3割冗談)←

 

これで残るは第3基地での戦いのみ!どれだけ長くなるかは知りませんが、AISだしそんなに長くはならないでしょう(フラグ)

 

ストーリーのアイディアをくれたイデさん、本当に助かりました!お礼に祝勝会の席をミカン箱にすることは避けてあげましょうw

 

ではでは、第3基地でヒューナルおじさんの活躍にご期待くださいノシ