鉄道と音楽が似ているなんて言っている手前上、その根拠についてそろそろ何か言っていかないといけないなぁとは思っています。そのエビデンスの一つとして、「鉄道模型系YouTuberには音楽の使い方の上手い人が多い」みたいなことを以前チラッと書いたかと。

 

それで、まず筆頭の方を挙げるとすればこの方になるのではないかと。Nine Worldさん。てな調子でやっていくと、次は誰を取り上げようとか七面倒くさいことになっていくので、やっぱ数例一挙に挙げちゃったほうが良いのではないかと思い直して、タイトルをちょっと修正したりしています(どうするか、まだ未定)。

 

この方の動画は模型系のコンテンツとして体験談から来る実践的な内容で勉強になるのだが、動画製作の面でも非常に見やすくて印象的。顔出し・声出ししないボイスロイド女性語りだが、これまたセンスのある人がやると、何とも魅力的になるのだなぁという好例。

 

動画の構成はパターン化しているが、一連の流れがあるので、もう水戸黄門なり連続ドラマを楽しんでいる感じで、ゆっくり系動画にあるようなマンネリ感や、「似たようなのを繰り返し聞かされる拷問感」が全くない。冒頭にちょい出しの内容ワンカットがあり、イントロ(音楽、映像編集、テロップなど見事に手際良く編集されている)。それが終わるとチャイム音みたいのがなり、本編に入るんだなという区切りがある。そこにちょっと鼻声の色っぽいボイスロイド女性声が絡んでくる。購読のお願いのタイトルバックに、「最後まで見てね〜」。そりゃ、見ちゃうだろうと。

 

そして、その回のテーマが読み上げられるのだが、音を目立たせたい所はリバーブやエコーかけるという、テレビ・ラジオ番組などでは定番の手法が見事に決まる。意外とYouTubeでは使われていない手法のように思う。その一方で、YouTubeでおなじみの効果音(和太鼓のドドンなど)も嫌味なくさらっと使っていて、音の使い方が実に上手い。こういうものは使いすぎると陳腐になると思うが、適材適所でスムーズに聞ける。

 

話の進展によってBGMも変えながら、ボイスロイドに全て読み上げさせるのではなくテキストのみの表示にあえてしている部分もあり、その辺もメリハリの付け方が上手いというか、難しい内容まで全部女性声に読み上げさせないことによって、かえって情報を伝えやすくしているように思う。

 

大体の動画では工作作業の映像が流れるが、少しおどろおどろしいワールドミュージック系のBGM。作業が一段落すると、明るめのBGMにチェンジ。特筆すべきは選曲のセンスが「あ、この人、NHK-FMの坂本龍一のサウンドストリート聴いてただろうな」という感じがあります。曲が変わっても統一感があります。テクノポップ+ワールドミュージック感が、非常にセンスよくまとめられています。

 

工作が一段落すると、カメラカー撮影の走行動画に移ります。BGMはホッとするようなスローテンポのものに変わっていて、安堵感、安心感を演出。エンディングに近づいていることを匂わせつつ、工作内容のレビュー、振り返り、まとめがテキストで説明される。ボイスロイドはテキストに第三者視点を与えるように、スポットで挿入されて、これがまた印象的。CoeFontは今は有料化されていて、ずんだもんとか四国めたんのような無料系でないので、ありふれてないのが功を奏しているのかも。ひろゆきの声フォント使う時もあるので、まぁ、ある程度お金をかけないと良いものは作れないとは思います。

 

エンディング近く、「当レイアウトはこちらの月刊誌にも詳細が記載されています」と色っぽい女性ボイスロイドが読み上げ、TMSの表紙が出る。何かもう権威付けというか宣伝というか、手際の良さに脱帽してしまうのであります。この辺りでボタン押しちゃう人は多いんじゃないだろうか。そして、最後は別の女性ボイス、しかも英語で購読のお願い。登録ボタン押せに付きまとう嫌味が全くない。英語でサラッとイメージ広告みたいな方向へ逃げて、「他の動画も見てね」と色っぽい鼻声。

 

動画の作りが最上級にスムーズでバランスが良い。流れがあって、単調さや嫌味がない。この動画は動画というより上質の音楽のように流れていると思います。手持ちなり三脚なりの動画、カメラカー動画、進行によって切り替えるBGM、効果音やエフェクトの挿入、テキストと読み上げの使い分け。これらの素材をまとめ上げる総合力、構成力が鉄道模型の原動力なのではないだろうか。

 

そして、音楽というのも実は細かいものの積み上げの末、総合して出来上がるもので、時間と共に流れるものです。似てませんかね? 部分であり、全体であり、流れるもの。

 

説明欄にはBGMの出所の記載がない。音楽編集はLogicProXをお使いで、もしかしたらBGMは自作曲なのかもしれない。

 

鉄道模型YouTuberで音楽やっている方と言えば、こばけん鉄道ちゃんねるのこばけんさんですね。冒頭の壮大なクラシック交響曲のようなテーマ曲、これはこの方の自作曲なんですよ。私が知る限り(想像も含むが)、音楽系の職業の方で作曲とか指揮とかやられている感じかと。

 

さらに、私が「鉄道=音楽」論を確信するに至った動画作者がおられまして、こばけんさんの友達のさてうさん。このショート動画(すみません、例としてベストではないと思いますが、メモってないのでどの動画だか忘れちゃってます)、冒頭からBGMとセリフの同期のさせ方、音楽を意識している感じがありあり。で、結局最後キャラが歌っちゃいます。ジョイント音聴き続けた人たちの中ってこうなっているんだなと。言葉の音の高低と音階との間、その差は実はそれほど大きくないということですね。

 

そろそろ、この記事終わりたいと思っているんですが、「車窓」についてちょこっと触れます。風景を列車から眺めるとどうなるか。それは風景が音楽化してしまう、ということなのではないか。音を聞きながら眺めるだけでなく、風景自体が流れることによって音楽化してしまう。

 

鉄道<模型>を趣味とするということは、それらを全て受け止めるということであり、多くの場合、一人で全てに対処するということなわけで、全体、総合という方向になって行かざるを得ない。行為とすると、作曲とかプロデュースに近いのだと思います。