おとぎ話「ひよことお友達」
この世に地獄はありますか?
生きながらにしてこの世が地獄と感じることはある。
これはそんなおとぎ話。
愛する人との生き別れ、死に分かれ、事故による不具、裏切り、失恋、挫折、恥辱、孤独、
そんな失意の底の底をのぞいてみれば、不意に広がるお花畑。
私はある時、そんなお花畑に迷い込みました。
そこには、とても可愛らしい、
ひよこが一匹、ひよこが二匹
、ひよこが三匹◎おりました。
私はひよこたち◎に聞きました。
「お友達になってくれますか?」
すると、ひよこたち◎は答えます
「よいでしょう、あなたの失望が本物ならば、もう私たち友達です」
私はすかさず問いました。
「私もひよこになれますか?」
ひよこたち◎は首を傾げます。
「あなたはあなたでいいのにね、なりたいのならなればいい、ここではあなたのなりたいものにあなたはなれるよ」
私はすかさず言いました。
「ならいいや、私はあなたたちのうちの一匹を殺して食べて、私のままで戻ります」
こうして、ひよこの一匹は私の栄養になりました。
私は残る二匹のひよこに言いました。
「あなたたちオスとメスでつがいになって、また三匹◎に増えといてね。気が向いたらまた来るから、その時は、お友達になれるといいね」
気付けば私は日常に戻り、ひよこの一匹を食べた事で、私は元気になりました。
私は友達を食べて生きながらえた。
日常にある地獄。
なんということもない、よくある話。おとぎ話。