原子価結合法とLCAO-分子軌道法(1) | 化学の電子状態のブログ

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このシリーズは、水素分子の時間に依存しない電子軌道の波動方程式より、水素分子の電子軌道と、その全電子エネルギーを求めます。求める方法は、VB法と、シンプルLCAO-MO法という2つの方法を使います。

 

積分値は、8PRO積分表を引用すると、三角関数、指数関数、および対数関数が全く出てきません。そして式から見たVB法とLCAO-MO法の理論という話の展開になります。

 

「Schrödingerの波動方程式」
1926年にSchrödingerが提唱した「Schrödingerの波動方程式」と呼ばれる方程式は時間を含むものでした(このシリーズでは以降、単に波動方程式と記します)。波動方程式といえば相当広義に定義されます。しかし時間を分離することにより「時間に依存しない波動方程式」を得ることができます。さらに電子だけに着目することにより、このシリーズで使う「時間に依存しない電子軌道の波動方程式」を得ることができます。

 

「原子の核」
このシリーズでは原子Aの核または原子Bの核という表現が出てきますが、原子の核の中身についてはふれず、原子番号Zの核は「プラス電荷+Zeの質点」として扱います。

http://ne.phys.kyushu-u.ac.jp/seminar/MicroWorld3/3Part2/3P27/summary_3P2.htm

 

●原子核の液滴模型

○講義ノート - 東北大学 原子核理論
http://www.nucl.phys.tohoku.ac.jp/~hagino/lecture2/niigata08.pdf
http://www.nucl.phys.tohoku.ac.jp/~hagino/lectures/nuclphys2/notes13-7.pdf

○原子核の基本的性質 - 実験核物理研究室

http://ne.phys.kyushu-u.ac.jp/seminar/MicroWorld3/3Part2/3P27/summary_3P2.htm

 

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本稿のもとは以前ノートに記していたものです。少し整理したつもりですが、
まだ雑記帳の域は出ていないと思います。さらに話が混乱してしまった場合も
ご容赦いただくこととして、とりとめもない話をまじえながらすすめていきます。
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水素分子はH2とあらわされ、水素原子が2個あります。それぞれの原子をAとBとします。ここの前書きでは、電子スピンは省略しています。

 

VB法
VB法は、ValenceBondorbitalmethodの略で、原子価結合法またはVB法と呼ばれています。さらに発明者のW.HeitlerandF.Londonの頭文字をとってHL法と呼ばれることもあります。

VB法では、次のように解きます。

(i)充分に離れた距離に原子AとBがあり、それぞれ原子Aに電子1、そして原子Bに電子2があるとします。電子軌道は水素原子の1s軌道を使い、それぞれ次のように表わされます。
(i-A)水素原子Aに電子1があり、原子Aの核Aと電子1の距離をrA1として、rA1を変数とした電子原子軌道は次のようになります。a0はボーア半径と呼ばれる定数でありπも定数です。
化学の電子状態のブログ-1-1
(i-B)水素原子Bに電子2があり、原子Bの核Bと電子2の距離をrB2として、rB2を変数とした電子原子軌道は次のようになります。
化学の電子状態のブログ-1-2

(ii)原子Aと原子Bが近づき水素分子が形成されます。水素分子の電子軌道は次のように表わされます。
化学の電子状態のブログ-1-3

 

2個の水素原子から水素分子が形成されていくイメージ
英国の研究室

http://winter.group.shef.ac.uk/orbitron/MOs/H2/1s1s-sigma/index.html

 

(iii)水素分子となった状態では、電子1がBにあり、電子2がAにあるという、電子が入れ替わった状態もあるはずである。この状態の水素分子の電子軌道は次のように表わされます。
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(iv)2つの状態のトータル、つまり(ii)と(iii)の状態が合わさったものとし、C1とC2を係数として、水素分子の電子軌道ΨをVB法では次のようにおきます。
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MO法
MO法は、MolecularOrbitalmethodの略で、分子軌道法と呼ばれます。

MO法では、次のように解きます。

核A上と核B上に、原子軌道χA(ここではカイと発音します)とχBをそれぞれ1個づつ配置します。この原子軌道χAとχBの中身はずっと後で後述します。このとき電子1と電子2を特定せず、ある1個の電子とします。次に、分子トータルで、ある電子1個が入る、言い換えると電子が1個しか入れない1電子軌道を考えていきます。

解き方としては、まず、ある電子1個が入る分子トータルの電子軌道をおき、求めます。そして得られた電子1個が入る電子軌道に、電子1を入れます。同種の別の電子軌道に、電子2を入れます。ここでいう電子軌道には電子が1個しか入れないため1電子軌道と呼ばれます。

 

LCAO
LCAOは、LinerCombinationofAtomicOrbitalの略で、訳せば原子軌道の線型結合です。
LCAOは、その名のとおり原子軌道χの線型結合のことです。

 

原子軌道χAとして、水素原子の1s軌道をそのままを1個使います。原子軌道χBとしても、水素原子の1s軌道をそのままを1個使います。変数rAおよび変数rBは、同じある電子1個と核Aおよび核B、それぞれとの距離です。
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シンプルLCAO-MO法
(i)分子トータルで、ある電子が1個入る分子トータルの1電子分子軌道を、CaとCbを係数として、次のようにおきます。


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(ii)分子トータルで、分子の全電子を考えた全波動関数を考えます。まず1電子軌道に電子1が入ります。もう一つの同じ1電子軌道に電子2が入ります。ゆえに水素分子の波動関数は次のように表わされることになります。電子スピンはここでは省略します。
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1電子軌道は共通であるため係数CaとCbも共通です。rA1は核Aと電子1の距離、rA2は核Aと電子2の距離、rB1は核Bと電子1の距離、rB2は核Bと電子2の距離です。

 

 

参考図書とウェブページ

●量子化学の本
◎初等量子化学―その計算と理論,大岩正芳,化学同人
◎量子化学入門(上),化学同人,米澤貞次郎・永田親義共著.


●電子軌道の描画
◎水素様原子の電子軌道のギャラリー
英国 University of Sheffield, Chemistry, Mark Winter 研究室
URL http://winter.group.shef.ac.uk/orbitron/

◎水素様原子の電子軌道の描画ができる無料ソフトウェアー
OrbitalViewer
(2004年9月で更新が終わっているので、WindowsXPのみ)
URLhttp://www.orbitals.com/orb/ov.htm
今回は、このソフトウェアーで描画した。