『セールスマンの死』(役者編) | なぁ助の勝手にレビュー☆

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あたし、なにげに英文科卒で専門はアーサー・ミラーだったんですよ。マリリン・モンローの3人めのダンナさんね。

で、そのアーサー・ミラーの代表作である『セールスマンの死』を、あたしの大好きな段田安則さんがやるっていうんだから、もう、行くしかないわぁ。ということで、パルコ劇場に行ってきました!

 

 

ちょっと前にあの、狂乱の『ロッキー・ホラー・ショー』をやってた劇場とは思えないくらい趣きが異なる。もー、めちゃくちゃ暗ーい、救いのないお話ですからね。覚悟はいいですか、みなさん爆笑

 

さて、やっぱり何と言ってもウイリー・ローマン役の段田さんの渾身の演技!!! これに尽きます。

冒頭、セールスマンのトレードマークである大きなスーツケースの傍らで、疲れ果てた風情で立っている段田さん。もう哀愁漂っててヤバかった。夢と現実の間で疲れ果てた感じ、それでもなんとか生きている感じ、立ってるだけでウイリー・ローマンだったよえーん

そしてあの声。ほんと、いい声だねぇ。段田さんの声は本当に独特。低いんだけど、鼻にかかっていて、なんか音が二重に響くんだよね。それがなんともいえないニュアンスを漂わせてる。

それから無駄を削ぎ落とした必要十分な演技ね。今回はとにかく動きに無駄がないなぁ、という印象。「老い」の表現なのかな。で、そのミニマルな演技を通して、ウイリーが精神的にギリギリのところでなんとか生きてるという張り詰めた緊張感が伝わってくる感じ。

その一方で、空想から現実に戻る瞬間に一瞬足を止めるとか、リアルではない示唆的な仕草もあって、それがわざとらしくなく印象深く響くんだよね。さすが、いぶし銀の演技だわ。

そもそも段田さんのお芝居は、なんというか、優雅な感じがあるから、今回の重々しい役にぴったりハマったんだね。以前シアターイーストの三谷幸喜のお芝居で段田さんを見たときには、ちょっとコミカルな要素もある役だったんだよね。で、なんかちょっと笑いにくいというか、少し違和感があって、あれー段田さんってこんな感じだったっけ?って思ったんだけど、今回はバッチリだった。まあ、合う合わないはあるよね。

とにかく、もんのすごい緊張感の続く渾身の演技。いいもの見せていただきました!!!

 

意外性のあるところでは、林遣都のチャラい役が予想以上にハマっててよかった。林遣都って、見るからに繊細で線の細い感じを放っているじゃないですか。現実にどんな方かは知らないですよ。多分、見た目とは裏腹にすごく男っぽいのかもと思ったりはするんだよね。「おっさんずラブ」で、あんなに話題になったのに、イメージが定着するのが嫌だからって、続編に出なかったっていう噂あるし。でも、まあ単純に見た感じは、触れたらこわれそうな感じですよね。で、林遣都が演じたハッピーという役は単にチャラいんじゃなくて、父親であるウイリー譲りの「現実逃避」を背景にもっている人物なんだよね。薄々自分のちっぽけさをわかっていながら、それを受け入れられず、そこから目を逸らすためにチャラく生きてる、っていう設定。だから、はまり役だったのかも。チャラく振る舞いながらも、そこはかとなく漏れ出る繊細さっていうんですか、ちょっと何かあったら壊れそうな危うさっていうんですか、そのあたりのバランスがすごく良く出てた。あー、まさにハッピーだねって思ったわ。キャスティングした人、スゴイな。

それであれを思い出したわ。フジテレビのドラマの『カラマーゾフの兄弟』の三男の役。おぼろげな記憶しかないんだけど、あれは、逆に、なんか暗さと繊細さが凝縮してた気がするんだが。もう1回見直したいな。

 

そして、福士誠治

舞台で見たのは2度めなんですが、前回は着物だったから気づかなかったんだけど、いや、めっちゃスタイルがいい。顔がきゅって小さくて足が長くて、モデルさんだね。そして、お芝居がこなれてる。なんだろう、器用な人なんでしょうかね。ソツがない感じがします。

ビフも難しい役どころで、小さいころから父親のウイリーを崇拝していたのに、運悪く彼の浮気現場に出くわしてしまったことで夢から覚めた人。そのせいで人生を棒に振ってしまったわけで、父親を憎んでいてもおかしくないんだけど、父への愛情は失ってなくて、正気を失いつつあるウイリーを気にかけている。ハッピーより父親への情愛は深いんだよね。でも、近くにいると父の現実逃避の世界に引きずり込まれてしまうから、父を突き放してそこから必死で這い出ようとしている。その微妙な感じを違和感なく演じていたと思う。どうも、朝ドラの『純情きらり』のイメージが強くて、あまりお芝居上手じゃないイメージが拭えないんだけど(第一印象って怖いね)、研鑽を積んだ演技派さんなのかも……。

 

鈴木保奈美は、出だしの演技が大仰で、段田さんとの落差に、うわ、どうしよう、って思ったけど、ウイリーを守るために息子たちに激しく詰め寄る長台詞の場面とか、圧巻でした。さすが。

なんだろう、鈴木保奈美の声って高くて響くから、舞台で声を張り上げると変に浮いちゃうのかな。だから抑えた演技しなくちゃならないときにけっこうキツイのかも。舞台より映像のほうが合うかもね。

復帰作のNHK大河『江』のお市を見たときは、あれだけのブランクがあったのに、すげーな、と思ったし、あと織田裕二と共演が話題になった『スーツ』の所長も良かった。演技というより、雰囲気と存在感で女優張ってるタイプなんじゃないかな、と思うわ。

まあ、個人的には、川井一仁と結婚したっていう事実だけで、きっと男気のあるいいヤツ、って思ってる。当時私もF1にはまってて、毎回テレビ中継見てたし、川井ちゃんのピットレポートとか最高だったから、鈴木保奈美見る目あるじゃん、って、保奈美株バク上がりでしたわ。

 

あと、白いスーツの高橋克実、最高!

出番少ないけど、重要な役どころのベン。ウイリーの年の離れた兄で、成功者の成金。セリフが断片的だから、ウイリーの憧れの対象として圧倒的な存在感を出すのが大変なキャラクターなのに、白のスーツと白のハットをバシッと着こなしていて、立ってるだけで「ベン」感めちゃめちゃ出てた。で、あのしゃがれた声が、ちょっと野蛮というかワイルドというかそんな感じを漂わせてていい感じだったわあ。やっぱり、叩き上げの役者さんだよねぇ。

まあ、個人的にはね、当時大好きだった、「夢の遊民社」の段田安則と、「劇団離風霊船」の高橋克実が、円熟した姿で共演している図が感慨深かった。時の流れ、偉大だわね。

 

そうそう、今回は掘り出し物があったのよ。前原滉

まず、冒頭の大事な場面で、すんごくゆっくり自転車漕ぎながら、ウイリーを見つめなくちゃいけなくて、もう、見てるだけで自転車倒れないかしら、って、ハラハラしたわ。この人すごく練習しただろうな、とか、めちゃくちゃ緊張するだろうな、とか、芝居と関係ないこと考えちゃって、それでまず記憶に残ったわけ。役柄は隣家の息子のバーナード。ビフとの比較対象キャラね。子供時代のメガネと半ズボンの姿がなんか違和感あって、ますます気になっちゃったわけ。演技は安定してるのに、この違和感はなんだろう、って。で、成長して弁護士になった姿を見て納得。いや、めっちゃスタイルがいい。福士誠治といい勝負。メガネと衣装でダサくしてたけど、長い脚が目立っちゃって違和感だったんだわ、きっと。雰囲気もよくてねぇ。この人、もっとお芝居上手になったら売れるかもって思っちゃった。

カーテンコールは間近で見られたんだけど、顔はなんというか、星野源タイプ? 決してイケメンという感じではないから、どっかの劇団の人かな、と思って調べたらトライストーン・エンタテイメントなのね。小栗旬とか綾野剛とかの。んで、なんと次、大河に出る! 小栗旬繋がりのキャスティングだろうね、きっと。

『鎌倉殿の13人』の5月1日の第17回!

なんというナイスなタイミングラブ

テレビの演技に注目したい目

 

……と、なんか長くなったので、今回はここで一旦中断。

次回は、演出について書きます~ラブラブ