今でも怖いなと思うし

先生には感謝している

ことがある。


小学生の頃、

朝、先生から


最近、

白い乗用車に乗った

男の人が


一人で歩いてる

女の子に

車から道を聞き、

その子が説明すると

もう少し詳しく

教えてと

言って車に

乗せて

乱暴をするので

絶対に

声をかけられたら

無視するか逃げて

大人に知らせるように

と注意喚起してきた。



付近の小学校に通う

児童に被害が

頻発していたようだった。


男の特徴も詳しく

教えてくれた。

真面目そうな

きちんとした感じだから

騙されないようにとも。


そして

なるべく一人で

帰らないようにとの

お達しも。


私の通っていた

小学校には

集団登下校は

なかったので


私は毎日、クラスメートの

誰かと帰っていた。


決まった友達ではなく

目の前にいる子と

方向が同じなら

帰るという感じだった。


その日も友達と帰ったが

その子は学校のそばに

住んでいたので

すぐに別れて

私は一人帰路についた。


なんとなく

朝の先生の言葉が

耳に残っていた。


一人で帰らないように

いわれたけれど、

今日は学校近くに

住むNちゃんだったしなあ…


などと考えて歩いていたら


目の前に

白い乗用車が止まった。


ドキドキした。


窓が開くと

運転席から男性が

声をかけてきた。


本当に先生の

おっしゃった通りに

道をきいてきた。


「ねぇ、君、

公民館は知っている?

確かこの辺りなんだけど」


怪しさはなく

身なりはきちんとしていた。

本当に探しているのかも

いや、

でも先生の話の男の人かもしれない


一瞬躊躇したが


わかりません


と震えながら答えると

怒ったように

窓を閉め

去って行った。


絶対に先生のお話のあの男の人

に違いなかった。


私は過ぎ去る車の

ナンバーをしっかりと

記憶した。


しかし

どうにも私は

詰めの甘さは

未だに変わらず


当時もやはり、


家に帰り

おやつを食べたら


すっかり忘れてしまい

誰にも

報告はしなかった。


でも

先生の注意喚起が

聞いたのか


その後

その男の話を

聞くことはなかった。


今なら

カーナビあるだろ?

とか

小学生に道聞くなっ

とか

ツッコミできるけれど

当時はそんなことは

できるわけでもないし、


それに今なら

防犯カメラもあるから

すぐに

男は特定できただろう。


いずれにせよ


先生のお話がなければ

警戒心は強い方では

あったものの

あの真面目そうで

きちんとした身なりなら

私は

道を教えてしまって

いたかもしれない。


となると…ガーン


先生の

タイムリーで

情報のつまった

注意喚起に


今でも

感謝している。


もしも

注意喚起がなかったならば…

怖い、怖い…