映画『HOKUSAI』を観て。 | ☆FLOWERS・・・☆
 
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静かに熱い映画だった。
何事も勝ち負けじゃなく
自分を信じて頑張るのが
大事なんだなって思えた。
パワーを貰えた!
 
物語は”壱の章”から”四の章”までの
4部構成になってて、壱から弐までを
(青年期~壮年期)柳楽優弥さんが。
参から四を(老年期)田中泯さんが
演じていた。
 
凄いなと思ったのが
泯さんへバトンタッチした後も、
別の役者さんに変わった感
まったく無かったところ。
柳楽さんが演じてたギラギラした北斎が
老年期を演じた泯さんの中にもいた!
 
そして田中泯さんの
"リアル葛飾北斎感" には衝撃。
実際にああいう風貌をしていて
ああいう佇まいだったのでは…
思ってしまったほど…!
お2人ともホント凄かった。
 
そして北斎をとりまく
まわりの登場人物たちも
みんな魅力的だった。
 
阿部寛さんが演じていた
版元の蔦屋重三郎も好きだった。
重三郎は確かな目を持ってたと思うので
北斎の事は最初から一目置いてたはず。
 
でもなかなか認めなかったのは、
”お前の絵はこんなもんじゃないだろ?”
という期待があり、あえて突き放して
見守ってたのかな…って思った。
懐の大きさと優しさを感じた人。
 
あと何といっても魅力的だったのが
喜多川歌麿と東洲斎写楽の2人!
 
若き日の北斎をぺちゃんこに
打ちのめした、歌麿と写楽。
2人とも”壱の章”のみの登場なのに
強烈なインパクトを残してた!
 
玉木宏さんの歌麿は凄くセクシーで
圧倒的カリスマって感じなんだけど
重三郎の「絵師なんていくらでもいる」
って言葉や、写楽という天才登場で
気持ちの揺らぎが見られたとこに
人間っぽさを感じて良かった。
 
そして晟周くんが演じた写楽。
落ちつき払った話し方と佇まい。
登場からただ者ではないオーラを
バンバン放っていた。
 
”吉原での遊び方も心得ている写楽”
というのに衝撃を受けたんだけど
何歳の設定だったんだろう?
かなり若くみえるけど二十歳は
超えている…よね??(笑)
 
その吉原でのシーン。
歌麿にお酌をする写楽。
その所作がとても綺麗で驚いた。
歌麿も色気がハンパなかったけど
写楽も負けてないと思う。
 
その時に歌麿が
「いいスジしてんじゃねぇか」
と言ったので、え…お酌の事?!
思ったら「絵の事だ」って(笑)
 
写楽も一瞬「?」って顔してたけど
お酌の事だと思ったのだろうか!(笑)
(だったら一緒だ!笑)
 
そして予告を観た時からずっと
気になってた北斎vs写楽のシーンを
やっと観られて嬉しかった。
想像以上に激しくて
まさに喧嘩。
 
相手をイラっとさせる事を言った後、
「…何かお気に触りましたか?」
と穏やかトーンで言う写楽が
ちょっとツボ…!(笑)
 
歌麿に対しても言っていて
まるで写楽の決め台詞!(笑)
あれはわざと挑発してたのか…
それとも素で言ってるのか…
少し判断に迷うところがある!(笑)
 
"絵は道楽で描いてる"写楽だけど、
北斎とやりあった時に「私はただ…
ここ(心)の赴くままに描くだけです」
と力強く言っていて写楽には写楽の
絵師としての信念がある事を感じた。
 
歌麿や写楽にあって、
若い頃の北斎に無かったものは
絵に対する信念だったのかもな。
 
北斎のプライドがズタズタにされる
辛いシーンなんだけど、自分的には
やっぱりここが映画の中で
ダントツ好きだった!!
 
あと写楽の好きなシーンは
蔦屋重三郎と初めて会った時。
写楽の含みのある視線が良かった。
相棒の時と似ているカットで、
監督がまた撮りたかった晟周くんの
”眼"って、あの眼かなと思った。
 
そして絵を描いてる時の
写楽には狂気を感じた。
圧倒的、目力。
あと少しで目ん玉が取れたと思う。
(ホントに!笑)
 
何かに憑りつかれてるようで
さっきの穏やかな写楽からは
想像つかない雰囲気だった。
 
北斎もよく「絵が見えた」と言って
紙を広げて急に描き始めていたけど、
芸術家には ”何かが突然降りてきた” 
みたいな感覚があるのだろうか…?
「いま描かないと消えてしまう!」
みたいな。
 
老年期の北斎が
江戸の町の中に吹く突風や、
柳亭種彦の死から
絵のインスピレーションを
受けたシーンも衝撃だったなぁ。
 
そう、柳亭種彦の最期は
悲しかったし悔しかった。
殺されるシーン(北斎の想像)は
かなり生々しく、首がちょん切れるとか
苦手な自分は「こ、これ以上は…」
目を覆いたくなった…(笑)
 
幕府が娯楽を取り締まるくだりは
この今の状況と通じるところを
ちょっと感じる。
 
去年から”不要不急”って言葉が
よく使われるようになったけど、
仕事は「必要」で娯楽は「不要」
みたいな認識がおエライさん達に
ある様な気がしてならない。
 
さすがに現代ではあそこまで
理不尽な取り締まりは無いけど、
根本的なものは変わってない気がして
観ていて無性に腹が立った…!(笑)
 
そんな事を感じながら観てたから
北斎の「こんな日だから描くんだ」
って言葉はグッと来た!!
 
去年公開延期になった時は悲しかったけど
むしろ今年観られて良かった気がする!
 
あと、浮世絵版画が
実際に出来上がるまでの過程を
映画の中で観られて感動した。
絵師・彫師・摺師がいて初めて
完成するものなんだな…と。
凄いよね。

 

雲母摺(きらずり)も綺麗だった。
すごくお金がかかるらしいので
重三郎は写楽の売り出しにかなり
力を入れていた事がわかるね。
 
そうそう、重三郎が「雲母だ!」と
言った時の写楽の表情も良かったなぁ。
ゆっくり満足げな顔に変わってく感じ。
晟周くん、本当に素晴らしかった!!
 
そういや阿部寛さんと晟周くんって
映画『恋妻家宮本』の時に
先生と生徒という関係で
共演してるんだよね。
 
今思うと「宮本先生とドンだ!」
って感じなんだけど、映画の中では
重三郎と写楽でしかなくて
その事をすっかり忘れてた。
それってお2人がその役にしか
見えなかったって事だから
凄いと思う。
 
 
出来ることならもう1度
観に行きたい……!