最後の戦いから何年が経ったのだろうか…
いや
あれは昨日の事だったのか…
大事な仲間もみんな死んでしまった。
愛する人も逝ってしまった。
今はもう静かになった宇宙空間の果てで
私は一人、旧型の複翼式宇宙戦闘機に乗り
最後のフライトに出ている。
しかしその旅ももう終わるようだ。
この空間には太陽と呼べる恒星がないらしい。
熱核エンジンの反応も終わりそうだ…
予備エネルギーも残っていない。
ゆっくりと
ただゆっくりと機体は眼下に広がる惑星に落ちていく。
この一瞬は静かだが
数秒後には破壊と終焉が訪れることだろう…
まぁそれもいい。
それも我が人生だ。
歳を重ねる度に諦めが増えてきたようだ。
ん?
以外と静かだな…
音がしない。
そうか…
この空間では音が届かないのか…
あるいは数十年後に聞こえるのかもしれないが…
機体がどんどんバラバラになっていく…
私の体も…
どうやら痛みは音と違って感じるようだ…
私の四肢は捥げ肉体は捻れ切れていく。
一瞬だが永遠のような感触。
激痛が走っているのだが不思議と冷静だ。
私の腹部らしき大きめの肉片が飛んでいく…
その時、私はなぜだかこう思ったのだ。
「良かった。私には身体があったのか。」
そこで全ては"無"となった。