1. 「デジタル教科書推進ワーキンググループ」という名称について
これは実際に
中央教育審議会
の中にある
「デジタル教科書推進ワーキンググループ」
という組織です。
ただし、日本の政策プロセスでは次の構造になっています。
-
中央教育審議会(全体)
-
部会
-
ワーキンググループ(個別テーマ)
つまり
「デジタル教科書をどう進めるか」
を検討するための小委員会です。
したがって
「そもそも導入するかどうか」は
-
中央教育審議会
-
文部科学省の政策
の段階で既に方向性が出ており、
ワーキンググループは
-
導入方法
-
範囲
-
制度設計
を議論する役割です。
つまり
名前が推進だから結論が決まっているというのは、
制度上はある意味その通りですが、
日本の審議会はほぼ全部この形式です。
2. 「北欧がデジタル教科書から撤退した」という話
これは半分正しく、半分誤解です。
北欧で話題になったのは主に
-
Sweden
-
Finland
です。
スウェーデン
2023年頃から
-
紙の教科書を増やす
-
デジタルだけにする政策を見直す
という方針を出しました。
理由
-
読解力低下
-
画面読書の理解度の問題
-
小学生の集中力低下
などです。
ただし
デジタルをやめたわけではありません。
実際は
「紙を増やすハイブリッドへ戻す」
です。
3. 「紙のほうが学力が上がる」という研究
これは多くの研究で言われています。
代表例
Anne Mangen(ノルウェーの研究者)
研究結果
-
長文読解
-
深い理解
-
記憶
では
紙のほうが有利な傾向
が多く確認されています。
理由とされるもの
-
物理的ページ構造(どこに書いてあったか記憶)
-
目の疲労
-
スクロールの負荷
4. ただし「デジタルのほうが良い分野」もある
研究では次も言われています。
デジタルが強い分野
-
動画教材
-
インタラクティブ問題
-
音声
-
拡大・検索
-
障害児教育
つまり現在の教育研究の主流は
紙 vs デジタルではなく
ハイブリッド
です。
5. 日本の2030年方針
文部科学省は
2030年度
から
-
デジタル教科書も正式教科書にする
-
紙かデジタルかは自治体選択
という方向です。
つまり
紙はなくなりません。
6. 授業トラブル(フリーズなど)
これは現場教師から実際にかなり指摘されています。
問題例
-
端末トラブル
-
ログイン
-
バッテリー
-
授業脱線(ゲーム・YouTube)
これは
文部科学省 の調査でも
約4割の教師が使いづらいと回答
しています。
結論
動画の主張を整理すると
正しい点
-
北欧で紙回帰の動き
-
紙の方が読解力が高い研究が多い
-
教室トラブルの問題
誇張されている点
-
北欧がデジタルを「完全撤退」
-
デジタルで学力が必ず下がる
-
世界の研究が全部同じ結論
実際の世界の流れは
紙+デジタル併用
です。
① 世界最大の教育データ
OECD の
PISA 調査
PISAは
-
約80か国
-
15歳
-
読解・数学・科学
を測る世界最大の教育調査です。
ここでデジタル機器と成績の関係がかなり詳しく分析されています。
② デジタル機器と学力の関係(重要)
PISA2022の結論は次です。
①適度な使用
少し使う → 成績やや上がる
②使いすぎ
長時間使用 → 成績下がる
つまり
「ほどほどなら良い」
「多すぎると悪い」
という結果です。
③ デジタルによる授業の問題
PISAの調査では次が出ています。
-
65%の生徒が
授業中にデジタル機器で気が散る -
59%が
他の生徒のスマホやPCで集中が乱れる
さらに
集中を乱される生徒は
数学の点数が平均15点低い
これは
約0.75年分の学力差
に相当します。
④ 国別の「デジタル授業での集中力」
面白いのが国別データです。
授業で「デジタル機器で気が散る」と答えた割合
| 国 | 割合 |
|---|---|
| アルゼンチン | 80%以上 |
| ブラジル | 80%以上 |
| ニュージーランド | 80%以上 |
| カナダ | 80%以上 |
| 日本 | 18% |
| 韓国 | 32% |
つまり
日本は実はかなり少ない国です。
⑤ デジタル時間と成績
PISAの典型的な傾向
| デジタル使用時間 | 成績 |
|---|---|
| 0時間 | 普通 |
| 1時間以内 | 少し良い |
| 1〜5時間 | 良い場合あり |
| 5時間以上 | 急激に悪化 |
つまり
「適度がベスト」
です。
⑥ なぜ紙が強いのか
研究者がよく言う理由
-
空間記憶
(どのページのどこに書いてあったか) -
スクロールの負荷
-
目の疲労
-
深い理解(Deep reading)
このため
-
小説
-
教科書
-
論文
などは
紙のほうが理解が深い
という研究が多いです。
⑦ 北欧の話の本当のところ
実際の流れは
-
北欧
→ デジタル教育を大量導入 -
学力低下(複数要因)
-
紙教材を増やす政策
つまり
完全撤退ではなく
紙+デジタル併用
です。
結論
世界の教育研究のコンセンサスは
①紙は理解力が高い
②デジタルは便利
③使いすぎは学力低下
したがって現在の主流は
ハイブリッド教育
です。
1 フィンランドのPISA順位の変化
特に読解力の変化が象徴的です。
| 年 | 読解力順位 |
|---|---|
| 2000 | 1位 |
| 2003 | 1位 |
| 2006 | 2位 |
| 2009 | 3位 |
| 2012 | 6位 |
| 2015 | 4位 |
| 2018 | 7位 |
| 2022 | 14位 |
つまり
20年でトップから中位へ落ちました。
2 なぜ下がったのか
研究では原因は一つではないとされています。
主に指摘されているのは次の5つです。
①デジタル化
フィンランドはかなり早く
-
タブレット
-
デジタル教材
-
電子試験
を導入しました。
その結果
-
長文読解が弱くなる
-
集中力低下
という研究が出ました。
ただし
これだけが原因とはされていません。
②読書量の減少
フィンランド教育省の調査では
子どもの
読書時間が大きく減少
しています。
スマホ・ゲームが原因とされています。
③移民の増加
人口構成が変化し
-
母語がフィンランド語ではない生徒
が増えました。
これは多くの国で学力統計に影響します。
④男女格差
フィンランドでは
-
女子 → 非常に高い
-
男子 → 大きく低下
という現象があります。
特に男子の読書離れが深刻です。
⑤社会の変化
近年
-
スマートフォン
-
SNS
-
動画
が急増し
世界的に読書力が落ちている
と言われています。
3 フィンランド政府の対策
フィンランド政府は最近
-
紙の教科書を増やす
-
読書教育を強化
-
スマホ制限
などを進めています。
つまり
デジタルをやめたわけではなく
バランス修正
です。
4 世界の教育研究の現在の結論
多くの研究者は次のように言っています。
紙
強い分野
-
長文読解
-
深い理解
-
記憶
デジタル
強い分野
-
動画
-
音声
-
体験型教材
-
検索
そのため現在の主流は
ハイブリッド教育
です。
1 アメリカの大学研究
2016年、
United States Military Academy
(ウェストポイント士官学校)
で実験が行われました。
研究者
Susan Payne Carter など。
2 実験方法
学生を2グループに分けました。
グループA
PC・タブレット使用OK
グループB
PC・タブレット禁止
(紙と黒板のみ)
3 結果
試験結果は
PC禁止クラスの方が成績が高かった
平均で
0.18標準偏差
成績が良かったと報告されています。
教育研究ではこれは
かなり大きい差
とされています。
4 なぜ下がるのか
研究では主に次が原因でした。
①マルチタスク
授業中に
-
SNS
-
メール
-
別のサイト
を見てしまう。
②周囲の学生も影響
面白いのがこれです。
PCを使う学生がいると
周囲の学生の成績も下がる
という結果が出ました。
理由
-
画面が視界に入る
-
集中が切れる
5 もう一つ有名な研究
2014年
Princeton University
と
University of California, Los Angeles
の共同研究。
研究者
Pam Mueller
Daniel Oppenheimer
結論
ノートを
手書き vs PC
で比較すると
手書きの方が理解力が高い