(2024年度-No.9)

行った日 : 2024.1.20(土)

ブログ作成日 :2024.1.27(土)

 

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「淡水のうみ=琵琶湖」を意味する「あはうみ」が変化した「近江」

私が最も愛する滋賀県のことです

 

近江には 紅葉でたいへん有名な 「湖東三山」があります

 

<季節外れの写真ですが↓>

<湖東三山・西明寺-2012.11.25撮影>

 

 

そして南には 「湖南三山」という 紅葉の名所もあります

 

<湖南三山・常楽寺-2009.11.15撮影>

 

この湖南三山の一つ 「長寿寺」に行って こんな学習をしてきました

 

 

長寿寺は 聖武天皇の勅願寺として 

良弁僧正によって 建立されたといわれています

 

 

この本堂は国宝

ご住職の話では 屋根の檜皮を吹き替えるのに 約2億円かかり

内2000~3000万は村の負担

それでも 村ぐるみで このお寺を大切に守られているとのことです

 

 

本堂の扁額に書かれた「阿星山」は 近くの標高693メートルの山

以前ブログで書いた「紫雲の滝」は そこにあります

 

<紫雲の滝-2022.7.11撮影>

 

本堂前の池に浮かぶ「弁天堂」

 

戦国時代(室町末期)に建てられた重要文化財です

 

 

境内で一番 私の心を捉えたのは この多宝塔

 

聖武天皇の菩提を弔うために 鎌倉時代に建立されたようですが

近江の国にふさわしい 石の文化を示す がっちりとした石造物です

 

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ここの住職は 境内を楽しく廻れるようにと

様々な工夫をされています

 

思わず 一緒に合掌したくなってしまいます

 

 

この可愛い僧の後ろに掲げられてる「千体地蔵図」が

今日の学習会のテーマにつながります

 

 

その庫裏の中に 入らせていただきました

ご住職のオシャレな感覚が 伝わってきます

 

 

光と影の演出

 

地域の方々の作品が 庫裏の中に うまく展示されていました

 

 

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長寿寺をいったん出て お隣の「十三寺」に移動

 

 

ここでは まず 長寿寺ご住職の 藤支良道氏より

今回テーマに関わる 「地蔵曼陀羅図」との出会いについて

お話がありました

 

 

<なんとも可愛いお顔の地蔵尊が 丁寧に書き込まれた「地蔵曼陀羅図」>

 

続いて 琵琶湖文化館学芸員 和澄浩介さんから

地蔵像の変遷と 千体地蔵についてのご講演

 

 

一般的に お地蔵様は 右手に錫杖を持たれていますが

古い時代の地蔵像には 手が下がった「来迎印」のものがあります

 

 

左手に宝珠を持たれているのは 後と共通しています

 

 

こちらは 一般的な 右手に錫杖 左手に宝珠のお姿

後光が美しいですね ↓

 

 

中には 次のような 半跏思惟像の地蔵菩薩もおられます

 

 

どことなく 人の悩みをいかにせんかと

思い悩んでおられるようにも見えます

 

 

袈裟の装飾にも 時代による変化があるようで

上のものは のっぺりとした 無装飾

 

 

↑こちらは うっすらとではありますが

袈裟の文様が浮かんでいます

 

 

水紋が施された袈裟もあります

 

 

こうして 鑿(のみ)のうがった後を 残したままの地蔵像も ↑

 

 

さらにこの地蔵像は 仏の姿ではなく 神像そのもの

手には 杓を持っておられたのでしょう

 

まさに仏教を日本に取り入れるために 古来からの神道に乗っかろうとした

神仏習合の歴史を 見て取ることができます

 

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こうして 地蔵の歴史を学んだ後 今回のテーマ「近江の小さな仏たち」に

 

 

これは 高さが30Cm程度のようですから 

周りの一体一体は 1Cmにも満たないのでしょうか

 

閻魔大王や鬼まで彫られており 地蔵菩薩の役割が鮮明になっています

 

私見ですが この像を持って 僧侶が家々を周り

地獄の様子と そこから人々を救済する地蔵様のお姿を語り

信仰を深めることで救われることを 説いて回ったのではないかと考えます

 

 

こちらは 壁面に千体の地蔵像が祀られています

 

 

同じ千体でも こちらは中央に 立派な本体の地蔵像があり

周りは 後から随時置き足されていったようです

上部には やや大きめの地蔵像も置かれています

 

 

中央におられるのは 錫杖を持たれているので 地蔵菩薩ですが 美しいお姿です

 

 

こちらは 石地蔵が地蔵堂に祀られ 信者が周りに

小さな地蔵像を置き 自らの信心を表していったのでしょう

 

 

こうした 近江に点在する 地蔵像や千体地蔵を巡ることで

人々の地蔵信仰の根強さを 確かめることができました

 

 

最後に 改めて長寿寺の「地蔵曼陀羅図」を見なおしてみました

 

中央に置かれた地蔵菩薩らしいお姿の仏様の周りに

千体以上も描かれた 地蔵菩薩

その一体一体から 当時の人達は そして今の私たちは

なにを感じ なにを願い なにを求めてきた(いる)のでしょうか

 

 

そんなことを深く考えさせていただけた この日の学習会でした

主催された「近江の祭り研究所」の辻村ご夫婦に 感謝します

 

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会場の十三寺を出て 門前を見ると

赤いよだれかけを丁寧にかけられた石仏が

「またおいで」と呼びかけているように思えました