このシリーズは私と癌との日々を綴っていきます。こんな生き方をした人間がいたことが誰かの役に立てば。おざポンがどんなときでも一日一生で生きたことが教え子達の勇気に繋がれば。そんな想いを込めて。
2023年春
生存期間の中央値がわかり、残りの時間をいかに生きるかを常に考えていた。
癌は幸せな死に方だと思う。
昔は痛みと闘いながら苦しんだ末に亡くなった自分の親を見て、癌でだけは死にたくないと感じていたが今は真逆。
「あとこれくらい時間があるよ」
「その間あなたのやれることを思い残すことなくしてごらん！」
そう伝えてもらえているのだから、自分がこの地球に存在した意味を最期まで追求できる。
天変地異や戦争、交通事故や死に至る突発的な急病などに比べ自分は恵まれている。
日本人の死の美徳はJKBだという意見がある。
J…丈夫で
B…ボケずに
K…コロリンコ
死ぬ時は苦しまずに痛さを感じずあっという間に、というイメージが根強いのだと理解する。
今の私の理想は真逆だ。
死を迎える瞬間まで残された時間を最大限有効に使いたい！
最後まで自分らしく生きる！
子ども達と正対し目標に向かって全力で挑み、共に悩み試行錯誤し、叱咤激励し悔し涙を流し成果を喜び…熱い時間を過ごしていく。
子ども達が自己達成感に満ち溢れご家庭が笑顔になれば、必ず日本は元気になる！
小澤には国を変える能力などないが、出逢った子ども達に全力で接する愛とパワーは誰にも負けない！命ある限りその生き方を貫き通す。
～私が一生懸命残された期間を生きることにより、一人でも多くの子ども達の未来を明るく輝かせたい～
つくづく思う。激動で慌しかったけれど、いい人生だったと。
ところが！である。
大切な存在を立て続けに失ってしまった。
一人は行きつけの居酒屋のマスターだ。
6年前単身で富士に移住した自分は子ども達に囲まれていても夜になると独りで寂しかった。
家族もいない、話し相手もいない。そんな孤独だった自分をいつも優しく包んでくれた。
雨の日は店をしまい自宅まで車で送ってくれた。
塾の特訓で生徒達に弁当を一生懸命作ってくれた。「頑張っているんだから温かいものを食べさせてあげなきゃね」と。
素っ気なく口数の多い人ではないが料理はどれも心がこもっていて美味かった。私の大好きな蕎麦焼酎もわざわざ長野県から買い寄せてくれた。
塾で行くのが深夜になる私を嫌な顔一つせず待っていてくれた。娘のために貯めている500円貯金箱のためにお釣りはいつも500円玉をいっぱい用意して待っていてくれた。
そんなマスターが自宅玄関で転んで頸椎（けいつい）を損傷してしまい、あっという間に逝っちゃった…。
その年の元旦、マスターの店で。おざポンは髪の毛が少なくなって帽子をかぶっての生活↓
もう一人（一匹）は愛犬のピチだ。チワワのメスで15年間心友だった。
小さいからチビ、逆さまにするとビチ、それじゃ可哀想だからピチ。
いっぱい癒やしてくれた
いっぱい話してくれた
いっぱい一緒に寝てくれた
いっぱい散歩した
彼女とずっと一緒の生活だった。2018年に一度命を落としかけたが、それから何年も頑張ってくれた。
ピチと地元の茶畑を散歩。シャツは娘がプレゼントしてくれたお揃いのPICHIのシャツ↓（癌発覚前の2020年9月17日に撮影）
心の支えを一気に失った。まるで神様が「小澤、早く天に召されなさい」と言っているようだった。
富士に友達はいない。
家族もいない。
孤独な長い夜に自分を支えてくれたのはマスターとピチだった。
本当に一人になっちゃった…。
（以下次号）
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