今日の話は早稲アカの話から始まりますが、イイタイコトは後半にあります。
早稲アカ擁護でも批判でもなく、塾講師・保護者の両方に向けたメッセージです。

■■■


早稲田アカデミーの教育理念は「本気でやる子を育てる」です。
「私語のない緊張感のある授業」が他塾との差別化です。
これは何もピーンと張りつめた重苦しい雰囲気を目標としているということではありません。
私語とは「同時に複数の生徒が発言している」状態を指し、「講師が授業空間をコントロールできていない」状態を意味します。
同時に複数名が発言しているとき、その発言内容が授業内容に関係していれば、活気があっていいんじゃないかという錯覚に陥ります。
でもそれは一部の元気なお子さんが過ごし易いだけの環境であり、全員均等なキャッチボールが行われなくなります。
また往々にして収まりがつかなくなり、「うるさい!」「静かにしろ!」の声が教室に響くことになります。

では、早稲アカの全教室で「私語のない緊張感のある授業」が行われているかというと、答えは残念ながらNO。いや、正しくは行われているクラスの方が少ないかも知れません。
成績が上がる授業には「レディネス」が存在します。
レディネス(readiness)
心理学用語。ある特定の事柄を学習するには、学習者が一定の発達を遂げていることが必要であるが、そのような学習成立のための準備性のことをいう。

たとえば、書き言葉を学習するためには話し言葉が十分に発達していることが望ましく、この場合、話し言葉は書き言葉のレディネスといえる。

また、例えば60歳になって英語を初めて学習するより、幼児の頃から始めた方がよいに決まっている。早稲アカではこのような適宜性(教育環境がピタッと合うこと)を「レディネス」と呼んでいる。

レディネスは年齢のことだけを言っているのではなく、もっと大事なことがあります。
それは「単指示」が徹底される空間なのか否かということ。
会話を止めなさい・手を止めなさい・顔を上げなさい・肘をつくのを止めなさい・注目しなさい・ノートに写しなさい・テキストの○ページを開きなさい…
そういった講師側の単指示が教室全体に浸透しなければ、成績は上がるわけがないですよね。
一時の公教育の授業崩壊の現場では、単指示は全くと言っていいほど生徒に伝わっていませんでした。

さて、早稲アカには「遅刻してきた子にはノックをさせ、理由を言わせ入室を許可する」というルールがあります。
何かに書かれているのか暗黙のルールなのかは定かではありませんが、少なくとも私が責任者をしていた校舎ではルール化していました。
ところが徹底されないのです!
遅れてきた子はノックをせず、無言でバタンとドアを閉め、平気な顔で着席する。
それを注意しない講師が多いのです。
たかがノックのことで何が言いたいの?と思った方は危ない。
あなたが講師ならクラスのレディスが危ないし、あなたが保護者ならお子さんのレディネスが危ない。
例えば塾講師が「次までにこの宿題を完璧にやってこなければ追加プリントをどっさり出すぞ!」と言ったとします。
ところが宿題を終わらせられなかった子に、そのペナルティーがなかった。
それどころかノートチェックも満足に行わない。
宿題をやり切れなかった子は次からどうなりますか?
泣きながらでも宿題を仕上げてきた子の感情はどうですか?
なんだ、やらなくてもいいんじゃん!

「御飯を残したら、おやつはなしね!」とママが言ったとします。
でも、結局は与えてしまった。これも同じことが起きます。
大人の言うことはいい加減だ。その時はわかったフリをしとけばいいんだ!
という感情が芽生えます。

考えてみてください。会社の上司が会う度ごとに方針が変わり、コロコロ意見が違うとします。仕事を成し遂げても中途半端でもたいした評価はしないサラリーマン上司。
その上司にあなたは人生を捧げようと思いますか?
リーダーは一度口にしたことは、どんなことがあっても実行しなければならないのです!


子どもたちは大人を観察しています。
いえいえ、私たち自身だって周囲(上司・同僚・部下・友達・旦那・妻・我が子)をジロジロ観察しています。
コンビニの店員が先に並んでいた自分よりも、後から並んだ客を優先させてしまい、カチンときた経験はありませんか?
気の利いた店員は「2番目にお並びのお客様、どうぞ!」と必ず言うもんです。
そう、ルールは徹底せねばならないのです!

だから他人に指示を出す時は、慎重に検討してからしなければいけません。
その指示は何の目的で出すのか熟慮し、ひとたび口にしたら徹底するのです。

〇〇しなさい!と冷静さを欠き、思いつきで言っていませんか?
一度言ったことは絶対に最後まで曲げていませんか?
言うことをコロコロ変えていませんか?妥協していませんか?
矢継ぎ早に指示を出し、子どもを混乱させていませんか?

胸に手を当ててよーく思い出してください。
もう一度言います。
成績が上がらない場合、レディネスが壊れている=単指示が行き通っていない=ルールが崩壊している可能性があります。
そしてその場合、原因は指示を出している者にあることが案外多い。

もしあなたのお子さんが、あなたの担当のクラスが、成績が上がらずに悩んでいる場合は、勉強方法云々言う前にあなたの言動そのものを見直すことをお勧めします。

ノックをさせる。些細なことです。
でも、その徹底が重要で難しいことなのです!!