夏が来て、思い出すのは
原爆、終戦、日航機墜落

私が小中学校の頃は
8月6日は夏休み中の登校日だった
授業はなくて
校長先生のお話と映画を観た

はだしのゲン
とか戦争にまつわる映画

幼いながら
絶対、戦争をしてほしくないと思ったし
自分達はこの時代に生きていて幸せだと思った


子供たちに戦争は伝わっているんだろうか
そんな機会はあるんだろうか

戦争を体験した人たちは
時が流れ、確実に少なくなっている
聞きたくても聞けなくなっていく

三男が小学5年か6年の夏
ろくじろうにいたおじいちゃんから
直接、戦争の話を聞かせてもらった

三男の年齢を聞いて「まだ早い」と言ったやすさんに
無理を言って話してもらった


「戦争はな、よくてこれだ。」
そう言って変形してしまった腕を出してみせた
恐る恐る、その腕を触る三男

今まで自分の体験を
家族にすら話したことはなかったやすさん

ゆっくり、ゆっくり
話してくれた

日本から離れ
どっちに日本があるかも分からないけど
遠い空を見ながら、日本の歌をうたった

ひとしきり話すと
「今日は聞いてくれてありがとうな。」
笑いながら、泣きながら
三男の手を握った

「また続きはおいおいにな。」


それから間も無く
やすさんは体調を崩した

見舞いに行った三男を見て
「今日はじーは具合が悪いから
話はしてやれねーなぁ。」
「今日は顔見に来たんだよ。」

数日後
やすさんは亡くなった

三男は本当に貴重な体験をさせてもらった

今でもたまに
あの日、やすさんから聞いた話をする

「戦争はな、よくてこれだ。」

そっと触れた腕を今も覚えていると。


やすさん
ありがとうね。
大事な話をありがとうね。

続きはおいおいにな。