昨夜の「すずめの戸締り」に引き続き、新海誠監督の「きみの名は」を観た。 

 

 これも、ネット上であふれるレビューでお腹一杯状態であるが、記録的大ヒットになったことは理解できる。精緻かつ解像感あふれる美しい映像体験に、定番の「入れかわり」や「時間遡行(でいいのかな?)して愛する人を救う」「大天災?」要素をちりばめて、テンポよい展開で楽しませてくれた。

 

 そもそも、すずめの戸締りを先に観たので、自分も新海監督作品を遡行したわけだが、この「君の名は」を先に見たなら、彗星が分裂して落下していく美しい映像と村の全滅という背景の落差に、観客は新鮮さを感じたに違いなく、それもヒットを支えた一因だと思えた。

 

 次は「天気の子」を観る予定だが、この監督は自然現象のダイナミックさと、市井の人々(今回は特に窒息しそうな村落の人々と限定的だったが…)を対比させるのがスタイルと思えた。そして、やはりセカイ系という言葉を思い出さざるを得ない、脈絡なく唐突な救世主たるヒーロー、ヒロインの誕生。

 

 ただし、今回はヒロインを救うために村を救うので、すずめの戸締りよりはセカイ系的ではない。かといって、感情移入できないというレビューもついてまわる新海誠監督作品の主人公たちだが、今回も、命がけの愛…に至る感情や内面の描写は少ない。

だが、それは批判に当たらないだろう。そもそも、映画のレビューでは減点しなければならないことが義務のように思っている方々もいるが、だいたいの製作者や監督は承知でやっている。今回もしかりで、過度なキャラ立ちは共感できる観客を限定してしまう可能性がある。また、「シンクロニティ」を体験した主人公にとって、入れ替わった相手を死から救おうとすることに、あまり説明は必要ないだろう。

 伏線としては、ヒロインが暮らしていた息苦しいような村の生活があり、それとの対比として、「入れ替わった」二人がこういう展開になっていくのは当然であり、仮にこれが現実だったら、だれでも、そんな気持ちになる。その程度で命がけになる気持ちの説明はじゅうぶんだろう。仮に時間遡行して救えなくても、今の自分が死んでしまうわけではないという冷めた見方もある…。

 

 映画通には「タイムスリップ」に伴う様々な場合を知っているだろうから、あまり新鮮味はなかったかもしれないが、主題である「君の名は」につながる二人の記憶について、観客には新鮮(かつ感動的に?)に映ったに違いない。それもヒットの一因だろう。


 結論的には、映画の定番要素を美しい映像のなかにちりばめた、ある意味では映画の王道を行く娯楽作品としておすすめできる。

 ただし、これを娯楽ではなく、愛する人を救う映画にまで昇華するには、ヒロイン役を男にして、ヒーロー二人で、この物語を成立させる必要がある。

 なお、青春?恋愛モノとしては、今のセカイ系慣れした若者には違和感なく受け入れられるだろう。