公開日: 2023/09/29

タイトル: The Science Behind The Placebo Effect
ポッドキャスト: Science Friday
記事/原稿URL: 

 

概要:

米国食品医薬品局(FDA)のパネルが、一般的な風邪薬に含まれる鼻づまり解消有効成分フェニレフリンについて、プラセボ(偽薬)よりも効果がないとの見解を示した。このデータは、フェニレフリンとプラセボの効果を検証した2つのランダム化比較試験から得られたものであるが、ハーバード大学医学部教授でありプラセボ研究者であるKaptchuk氏によれば、プラセボ効果の確証を得るためには、「何もしない」第3のグループが必要であった。


プラセボとは、偽薬に含まれる不活性物質を指すわけではない。プラセボには、錠剤処方に紐付けられた習慣、シンボル、思いやりの行為等、様々なものが該当する。通常の診療の中で、サポートしてくれる親切な医師に出会うだけで、実際にプラセボ効果が引き出されることがある。

 

一般的には患者がプラセボだとわかっている場合は効果が得られないと信じられているが、そんなことはない。オープン・ラベル・プラセボ("honest placebo"と呼ばれることもある)とは、患者に薬理学的効果はないと伝えたうえで偽薬を与えるものだが、たとえ本人が効果を信じなくとも、エンドルフィンやカンナビノイド等の神経伝達物質の放出に影響し、有益な効果が得られることがある。プラセボが、それがプラセボであるとわかっていても、患者に利益をもたらすという証拠が蓄積され始めたのは、ここ10年、15年のことである。
 

プラセボが特に適しているのは慢性疾患である。多くの慢性的な症状は、脳や神経系が過敏に反応して誤報のような症状を引き起こしている。患者がプラセボ服用という習慣に従うとき、脳の過剰な反応は抑えられ、不快感の対象に対する解釈が変化する。

オピオイド中毒患者に対して行った、1、2週間の条件付けを伴うオープン・ラベル・プラセボ試験では、100人もの患者が、プラセボを処方されなかった患者たちよりもはるかに長くメサドン維持療法を続けることができた。オピオイド離脱プログラムの主な課題は脱落者であるため、これは大きな成果であった。

透明性があり、FDAの規定や米国医師会(AMA)の倫理規定にも準拠するオープン・ラベル・プラセボはこのように有用であるが、医療現場で本格的に使われるようになるまでには長い道のりがある。まず効かないと知っているのに効く、という考えは直観に反するため、地道な証拠の積み上げが必要となる。また原則として偽薬を使わない医師も多い。しかしKaptchuk氏は、腰痛、片頭痛、過敏性腸症候群、がんに関連した疲労感等の一般的な症状に対する服薬で効果が得られなかった人たちが、プラセボを試す未来が訪れることを期待している。

 

---

主に慢性的な症状に効果が限定されるとのことだが、自分で自分の症状を改善させてしまう人体はすごい。プラセボ効果がエセ医学に利用されないことを願う。