公開日: 2023/2/24
タイトル: Meow Money Meow Problems / How the cats of Dixfield, Maine came into a fortune — and almost lost it
ポッドキャスト: Planet Money
記事/原稿URL: 

 

概要:
2002年米国メイン州の田舎町ディクスフィールドでバーバラという一人の女性が亡くなった。彼女には子供がおらず、大の猫好きで2匹の猫を飼っていたが、地域の猫も愛しており、野良猫の世話をする女性たちを金銭的に援助していた。そして彼女の死後も猫たちがきちんと面倒を見てもらえるよう、遺書により慈善信託(charitable trust)の設立を希望した。
 

慈善信託として預けられた資産は故人の遺志に基づき特定の使途にしか使えない。150年程前までは慈善信託のような永続するチャリティーは認められていなかったが、1800年代末期、ジョン・ロックフェラーやアンドリュー・カーネギーのような実業家が社会的弱者救済を目的として資産の寄付を誓約すると徐々に受け入れられるようになった。社会に有益な制度ではあるが、慈善信託には難点が二つある。まず個人の遺志を明確に理解しなければならないこと、次に時とともに世の中が移り変わることである。

例えばチョコレートで有名なハーシーの創業者、ミルトンハーシーは莫大な財産を慈善信託として遺したが、その使途が限定されており、貧しい白人の孤児のために設立した学校の運営に充てられる。時代に合わせ、学校では非白人の児童や女児を入学させるために裁判所から許可を得てきた。

バーバラは、ディクスフィールドの捨て猫や行き場のない猫たちに住処、食べ物、医療を提供するために20万ドル近くを遺した。勿論この20万ドルを猫に直接渡せるわけもなく人が介入する。そして彼女の遺志は実行に移すにはあいまいだった。ディクスフィールドの愛猫家の女性たちの中に特に献身的なブレンダという女性がおり、町の人々も遺産は彼女に託されるものと思っていたが、何年経っても払われる気配がなかった。しびれを切らし法を頼ったが、信託からは時々小切手が送られてくるのみだった。住民と結託して訴えたこともあったが、さすがのブレンダも10年以上の法廷闘争に疲れてしまった。

 

バーバラはパートの家政婦を遺言執行者に指定しており、彼女は夫と友人を受託者に加えていた。夫妻は遺産の10%を管理費用として受け取り、また年数百ドルの事務手数料を引き出してはいたが、遺産のほとんどは手付かずだった。放置の原因は解釈の不一致にあった。裁判所の記録によると夫妻は遺志に基づき、シェルターを設立しようとしていた。しかしその計画はそのような経験のない夫妻には現実的ではなかった。

 

2016年ついにプロのメスが入った。州の司法次官補がバーバラの遺産に関する記事を読み、適切な組織に任せるよう夫妻を説得した。一地域の猫たちのためだけに慈善信託の管理報告等の手間を引き受ける組織を探すのは大変だったが、2019年についにディクスフィールドから30マイル程離れた町にシェルターが見つかった。長い法廷闘争の費用が差し引かれ、遺産は8万5千ドル程になってしまったが、昨年からディクスフィールドの猫を引き取り始めた。

 

またこのチャリティーはディクスフィールドの猫を世話する人々のための補助金制度を用意しており、このポッドキャストが担当者とブレンダをつなげるのに一役買った。亡くなって20年、バーバラの遺産がようやく彼女が愛した猫たちのために使われ始めた。

 

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せっかくの遺産が裁判費用に使われてしまったのはとても残念だけれど、残りの遺産がこれから何年にもわたって多くの猫の幸せ、そして心優しき愛猫家たちの負担軽減に役立ってくれることを願う

そして遺書は明確に書くべきであると肝に銘じたい。