Alamak! シンガポールの風⑨多民族・他宗教国家での祝日は | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

年末年始になると職場で必ず話題になるのが 「今年の祝日」。シンガポールでは日本のように祝日を「第○月曜日」と決めることはないので、 祝日と休日がうまい具合に連休をつくり出して くれるかどうかが、もっぱらみんなの関心事だ。


お正月も営業するホーカーセンター(屋外フードセンター)。
個人的にオススメはマックスウェル
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さて、シンガポールの祝日に関してよくいただくのは「シンガポールは多民族国家だからどの宗教の行事も国民の祝日になっていいね。たくさん休みがあるね」というコメント。今回は果たしてそれが本当なのか検証したい。  

まず否定したいのは「シンガポールはたくさん休みがある」という部分。少なくとも、日本との比較においては正しくない。シンガポールが11日であるのに対して日本は15日もある。シンガポールでも日本でも祝日が土曜日にかかった場合は振り替え休日がないため、この日数はその年によって多少変わる。それでもシン ガポールの祝日および振り替え休日が日本の日数を上回ることはなさそうだ。  

では「どの宗教のお祝い事も国民の祝日になっている」という部分はどうか。これは概ね正しそうだ。元旦、メーデー、建国記念日といった宗教と関係のない祝日を除くと、残るのは中華系が祝う旧正月、仏教のウェーサーカ祭(日本では花祭)、イスラム教のハリラヤプアサ(断食明け祝い)とハラヤハジ(聖地巡礼祭)、キ リスト教徒のための聖金曜日とクリスマス、そ してヒンズー教のディーワーリー(新年のお祝 い)と、多様な宗教行事が反映されている。ただ、なぜ2日間の祝日をあてがわれる宗教と、そうではない宗教があるのかといった点や、ユダヤ教の祝日は祝わなくていいのかといった点など、公平性を追求していけばきりはなく、多民族・多宗教国家の統治の難しさが見て取れる。

ちなみにシンガポールでは、毎年人材開発省(Ministry of Manpower)が翌年の祝日を発表する。なるほど労働に関する人材開発省が祝日の情報を管理・公開するのは理にかなっている気がする。ウェブサイトには職場における祝日の扱い、祝日勤務の際の手当てなどが示されている一方、日本で国民の祝日に関する事務を所掌しているのは内閣府の大臣官房総務課。祝日の由来などを事細かに記載している内閣府のウェブページをみると、実践的なシンガポールの祝日へのアプローチとは対照的に、日本(少なくとも政府)は祝日を国民が一体となって国の歴史や文化を愛でる機会と捉えている様子がうかがえる。

「ねっとわーくSAITAMA1月号」より(PDF版はこちらから)
Alamak= シンガポールのスラングで「あらまあなんてこった」の意味