独楽が澄む*A Top Sleeps | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

谷川俊太郎さんが好きです。長らく詩人としての谷川さんのファンでしたが、最近になって谷川さんがネットでも積極的に散文やつぶやきを発信していることを知りました。以来私は谷川俊太郎*comのファンにもなりました。

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さて、その谷川俊太郎*comに今日アップされたのはこんな文章です。

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独楽

机の上で独楽を回してます。文字通り独りで楽しんでます。独楽は友人からのプレゼント、ステンレスを精密に削り出したもの。精度表というのが付属していて、公差18.9±0.1に対して実測は18.955、直径を測った立派な数字だと思いますが、ぼくには猫に小判、木の机の上では抵抗が大きいので、陶器の皿の上で回してその姿に魅入られているだけ。

独楽が〈澄む〉という日本語の用法が好きです。まるで静止しているかのように直立して、独楽が回っているのを見ていると、気持ちが静かに透き通ってくる。回転がゆっくりになって独楽が首を振り始め、やがてころんと転がると、かすかに失望します。独楽の存在が人間存在の比喩みたいに感じられる瞬間。

ウェブで独楽を検索してみたら、独楽の世界の広大さに一驚、古今東西の人々が独楽を楽しんでいます。喧嘩する独楽もあります。やっぱり人間って独りで楽しむだけじゃ満足しないんですね。 (俊)


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独楽(こま)を回していて、一番回転が高まったとき、微塵も揺らぐことなく、静止しているかのように見える時があります。これを「独楽が澄む」と言うそうです。

知らなかった。

ちなみに、英語で「
独楽が澄む」は「A Top Sleeps」というそうです。

これも知らなかった。

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私の名前が澄子だからかわからないけれど、読みながら幸せがじわじわと心いっぱいにひろがった。

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一番回転が高まったとき、微塵も揺らぐことなく、静止しているかのように見える時

たったの一瞬。
凛として、気品に溢れ、動じない一瞬。

人間にもそんな瞬間はあるのだろうか。


また越えたい山が一つ見えた。