宮崎駿監督の作品で一躍有名になった「君たちはどう生きるか」という本。

 

まずは原作を読みたいなと思って原作を読んでみました。

 

これは・・・どうやってアニメ化したんだろう?というくらい

哲学の本でした。。

 

コペル君と呼ばれている中学生の生活の中で、

お父さんがわりの「おじさん」がコペル君にノートに書き残す形で深い対話をしていきます。

 

コペル君の心の移り変わり、おじさんのコペル君への対等な態度、

お母さんのやさしさ、友達との関係、、、

 

原作の文章はとても素晴らしく、読み始めてほぼノンストップで3時間くらいで読んでしまいました。

 

その中で心に残ったのはコペル君のおじさんがノートに書いた以下の言葉です。

 

「人間が本来、人間同士調和して生きていくべきものでないならば、

どうして人間は自分たちの不調和を苦しいものと感じることができよう。

おたがいに愛しあい、おたがいに好意をつくしあって生きていくべきものなのに、

憎みあったり、敵対しあったりしなければいられないから、

人間はそのことを不幸と感じ、そのために苦しむのだ。

また、人間である以上、だれだって自分の才能をのばし、

その才能に応じて働いていけるのがほんとうなのに、

そうでないばあいがあるから、人間はそれを苦しいと感じ、

やりきれなく思うのだ。

人間がこういう不幸を感じたり、こういう苦痛をおぼえたりするということは、

人間がもともと憎みあったり敵対すべきものではないからだ。

また、元来、もって生まれた才能を自由にのばしていけなくてはうそだ。

およそ人間が自分をみじめだと思い、それをつらく感じるということは、

人間が本来そんなみじめなものであってはならないからなんだ。」

 

「おじさん」という人の存在は、どこまでもコペル君の心に寄り添い、

何よりも「子供」としてではなくコペル君を「一人の対等な人間」として接しています。

そういうふうに接されるからこそ、本当の「人間を尊重する」という態度が

育まれるのだろうな、と感じました。

 

注目すべきは、この本が書かれた時代背景で、

ちょうど第2次世界大戦戦時中の言論弾圧の時代ということです。

作者の吉野源三郎さんは投獄されています。

 

この本は軍国主義の時代に、少年少女に「本来の人間らしさ」を

訴えた作品だったのです。

 

要約するのは原作の良さをつぶしてしまうし、要約するような作品ではないので書きませんが、

どんな出来事の後にどんな心の動きがあり、どんなやり取りがコペル君とおじさんの間でされていくのか。

日常の延長の中に綴られている気づきや葛藤、成長をぜひ読んでほしいなあと思った作品でした。

あと、何気に歴史や科学の勉強にもなる。

 

タイトルを見ると、多分子どもたちは手に取らない類の本だとは思うのですが。

でも、読み終わった後は他のタイトルは思い浮かばないくらいしっくり来るタイトルなんです。

 

ペンは力だなあ。