さらばアレッポ シリアの車窓から
同じホテルのイランのおじさんの勧めで、ラタキアへは列車で行くことにした。
「急行がいいよ。」と勧められたが、早朝と夕方遅くしかなかった。
このところ夜更かしが続いていた私たちには、
到底朝早く起きることは不可能だと考えたので、
3時48分の普通列車に乗ることにした。
急行だと2時間で着くが、普通だと4時間。
なぜ、昼ごろに急行列車がないのだろうか。
謎である。。
いきつけのレストランでのんびりと昼食を楽しみ、早めに駅に着いた。
アレッポ最後の食事は最近のお気に入りの店で。
トマトケバブとシシケバブ。行くたびに味が違うがおいしい。
シャイもたのんで、全部で300ポンド(約720円)
一等席は1人70ポンド(約168円)。二等席は50ポンド(約120円)
駅は列車待ちの人でごった返していた。
ほとんど地元の人たちで、外国人の姿は見当たらない。
日本人がよっぽど珍しいのか、いろんな人が話しかけてくる。
お菓子をくれたおばちゃんたちは、私たちの名前を聞くと、
写真を撮らせて欲しいと携帯を取り出した。
私たちも是非、シリアのおばちゃんの写真を撮らせて欲しいと聞いてみると、
おばちゃんは首の下を手で切るマネをしておどけた。
やはりアラブの女性にとって写真は御法度なのだった。
面と向かってはなかなか撮らせてくれない。
アルメニア人の青年は近づいてくると、英語で話しかけてきた。
なんだと思っていてると、彼もまた写真を撮りたいのだという。
その辺のおじさんにカメラを手渡し、三人で一緒に記念撮影した。
撮られるばかりでなく、とって欲しがる子供も。自ら写真に写りたがる人も多い
駅で私たちはちょっとしたスター気取りだった。
そろそろ時間になる頃。
アナウンスが響き渡ると、おばちゃんたちは「これよ。これよ。」と教えてくれた。
警官にチケットを見せ、ホームに向かう。
車両はなかなかオンボロだった。
座席についているテーブルはストッパーが壊れて閉じないし、
肘掛は持ち上げるとごそっと外れた。
しかし、これでも一等席なのだった。
なぜか座席は進行方向と逆向きだった。
後ろ向きに進んでいくので、なんとなく心地が悪い。
全部そうなのか?見渡すと丁度、
車両の真ん中のところで席の向きが変わっていた。
半分よりあちら側の人たちはこちらを向いている。
運が悪かったのか。4時間ずっと、後ろ前逆で座っていなければならなかった。
しかし、これでも一等席なのだった。
座席はともかく、この列車は景色が美しいのだということだった。
イランのおじさんは言っていた。アフマドさんも言っていた。
特に山の脇を通るあたりからのぞむ深い谷の絶景がすばらしいらしい。
発車してしばらくすると、のどかな田園地帯が見えてきた。
時々、羊飼いのおじさんや少年が手を振っている。
そうかと思うと、ゴツゴツした岩が散らばる荒涼としたところもある。
しかし、一向に深い谷には差し掛からない。
そのうち日も沈み、眠気がやってきて、ウトウトウトウト。
気づいた時には、あたりは真っ暗。
ふと、ユリが言う。
「さっき、すごかったで。」
なんと、寝ている間にワンダフルな景色は過ぎ去ってしまった。
それからしばらくしてラタキアに着いた。
列車がホームに停まると、乗客は一列になって車内を奥へ奥へと進まねばならなかった。
普通ならそのまま、車両から外に出ておしまい。
だが、なぜか長い長い列が、先の車両へと続いている。
車両の出入り口に差し掛かると、理由がわかった。
ホームがない。
ホームが車両より短いがために、乗客はホームのあるところまで歩かねばならないのだった。
途中、目にしたすぐ隣の車両は席がフカフカして気持ちが良さそうだった。
明かりも、薄暗い電灯しか点いていなかった私たちの車両よりも格段に明るい。
本当はこっちが一等なのではないか。
長い長い列車の旅が終わった。(yo)

