ハラブな日々
いつも行くと、忙しく仕事をしているというのに暖かく迎えてくれ、
帰る頃になると「また明日来いよ。」と言ってくれるドクター・サーメルたちだが、
ひょっとしたら、また明日。というのは、社交辞令なのかもしれない。
このところ毎日お邪魔しており、忙しそうにしている彼らを思うと、
さすがに気が引けてきたので今日は行かないことにした。
アロウダホテルの宿泊客には、欧米人やアジア人観光客はまったくおらず、
ほとんどがイランやイラク、トルコからやってきた人たちばかりだ。
陽気な従業員のザカリアさんに、「日本人客は来ますか?」と聞くと、
「ときどきね。」という答えが返ってきた。
私たちはその滅多にこない日本人客のうちの二人なのだった。
このおじさんは会うと、いつもニコニコと挨拶してくれる。
日本語の挨拶を教えてくれと言われたので、教えてあげると、
次にあった時は早速、「コン、ニチ、ワ」と挨拶してくれた。
イランから仕事でアレッポに来ているおじさんは英語がペラペラで、
たまにホテルの人との間に入って通訳してくれた。
2時間ほど停電して電気が使えなかったとき、ロビーでいろいろ話した。
何でも若い頃、ちょうど私たちと同じくらいのときに、いろんな国を旅したそうだ。
オーストラリアと日本を含むアジア諸国以外の国はほとんど行ったことがあるらしい。
イギリスとアメリカに留学していたこともあり、アメリカは車で横断したという。
なんの商売をしているかは謎だが、小さな仕事だと言っていた。
「日本はディスカバリー精神がある。スゴイ国だ。」
そういうおじさんは自分の国が嫌いなのだという。
「なぜか?」とたずねたら、絨毯ぐらいしか自国のオリジナルな産業がなく、
ほとんどの企業が外国資本で、物価も高く、環境も悪いからだということだった。
自分の国を誇りにしている人は良くいるが、
面と向かって嫌いだという人にはあったことがなかったので驚いた。
イラクからやってきたおじさんは、まるで友達のように明るく声を掛けてくれたが、
アメリカ軍の空爆で家族を失ったと言っていた。
英語がほとんど通じなかったが身振り手振りで伝わってきた。
笑顔の裏に大きな悲しみを抱えているのだと思うといたたまれなくなった。
シリアからほんの少し離れた国では、今も多くの人の血が流されている。
無言で鶴を折って手渡すと、おじさんは「ビューティフル。」と言って受け取ってくれた。(yo)
