オレンジと商人
もう日本ではすっかり見かけなくなった、手書きの映画の看板もシリアでは現役か
スプリングフラワーホテルの内装は石造り調で、雰囲気抜群。
ツインの部屋がトイレ、シャワー付で650ポンドと値段も手頃なのだが、
部屋には窓がなく、やや湿気が多かった。
暗い穴倉の中にいるようで、あまり居心地が良いとは言えなかったので、
出来れば、違うホテルに移りたかった。
幸い、この界隈にはたくさんのホテルが集中している。
そこで、他のホテルも試しに値段を聞いてみることに。
しかし、大体のホテルが700ポンドから1000ポンドで、
やはりスプリングフラワーが一番安かった。
「やっぱり、高いなぁ。」と諦めかけていた頃。
救世主が現れた。
通りに面しているア・ロウダホテルはなんと、一泊600ポンド(約1440円)。
部屋を見せてもらうと、さらに驚くこととなった。
室内は思っていたよりも広く、清潔。
しかも、ベットルームの他にもう一部屋ついていて
大きな窓があり、窓辺にはテーブルが置かれていた。
この旅で初めての2部屋。
おまけに、設備も充実している。
トイレ、シャワー付きはもちろん、
テレビ、冷蔵庫そしてエアコンまで備えられていた。
「この部屋で600ポンドは安い!」
迷わずチェックインした。
客層は私たちの他はアラブ系の人たちばかりで、英語も余り通じないためか、
ガイドブックには乗っていないが、思わぬお値打ちホテルに巡りあえた。
「探せばあるものだなぁ。」と二人で喜んだ。
良いホテルが見つかったところで、観光に出かけよう。
ということで、博物館に足を運んだが、今日は火曜日であいにくクローズド。
ならばアレッポ城はどうかと思ったが、やはり、火曜日はクローズドだった。
さて、どうしたものか。
ふと、昨日忘れたオレンジの事が気になったので、
再びスーク内の土産物屋に行ってみることにした。
ラマダン中だから、ひょっとしたらまだ、そのまま残っているかもしれない。
土産物屋に着くと、店主は留守なのか扉には鍵がかかっていた。
外から中の様子をうかがうがオレンジの袋は見当たらない。
店主が戻ってくるまでしばらく店の前で待つことにした。
10分くらい経って、ようやく店主が戻ってきた。
昨日来た日本人が戻ってきたと見ると、陽気な声で「ウエルカム!」と言って来た。
さっそく、オレンジの事を尋ねる。
店主は「メイビー、ノー。メイビー、イエス。」と分からないようなことを言った。
店の中を見せてもらうが、やはりどこにも見当たらない。
オレンジはどこへ消えたのか。。。
思わず、ユリが店主に「食べたでしょ。」と言った。
すると、店主はバツが悪そうにしながら「イエス」と答えた。
その瞬間。緊張の糸が切れ、みんなで大爆笑。
いつの間にかやってきた近所の店の親父も巻き込み、しばらく辺りに笑い声がこだました。
まさかとは思っていたが、やっぱり食べられていた。
曰く、「家族みんなでおいしくいただきました。」ということだった。
店主は「ソーリー、ソーリー。」と言って、オレンジ代の50ポンドを払おうとしたが、
もともと、忘れた私たちが悪いので、それはいらないと断った。
そして、昨日買いそびれたカフィーヤ(アラブの人が頭に巻いている布)を買いたいと申し出た。
昨日、強引にこの店に連れて来られて薦められたカフィーヤは、
はじめ1枚700ポンドと言ってきたのだが、あまりにもボッタくっているので、
頑なに拒んでいると、ついには50ポンドになった。
それでも、相場が分からなかったので、結局買わなかったのだが、
他の店を回っていると、50ポンドでは買えなかったので、再び交渉しようと思ったのだ。
私が「50ポンドか?」と聞くと、店主は「ノー」と言った。
聞けば、「50ポンドは昨日の価格。おまえが昨日その値段で買わなかったのが悪い。」ということだった。
そして、「今日は200ポンドだ。」と言ってきた。
実は、私はオレンジのことを気にしてちょっと負けてくれるかなと、期待していたのだが、
これはこれ。それはそれ。ということらしい。このアラブの商人はそんなに甘くはなかった。
子供の写真を褒めたりして、かなり粘ったがダメだった。
それでも、最終的に1枚150ポンド(約360円)にしてくれたので、
店主の商売魂に負け、買うことにした。
他の店を見てみると、大体、手織りのものは150ポンドが相場だったので、
別に安く買えた訳ではない。
昨日あの時、思わず店主が50ポンドと口にしてしまったのは、
ラマダン明け直前で、余計にイライラしていたためかもしれない。
ひょっとして、滅多にないチャンスを逃がしてしまったのか?
今にして思えば、もったいないことをした。(yo)
