『世界に通用する子どもの育て方』

 

一言でいうと、中身がとても濃いです。

私の価値観にとても合うということもありますが、重要箇所をまとめようとすると丸々移してしまいそうになるほどです。

 
 

ここでは、個人的に興味深かった箇所を3点上げます。

 

●外発的モチベーションは人間能を無力化させ、成功にさえ繋がらない

 

人には生まれつき好奇心や興味があり、これを満たしたいという動機がある。報酬や罰がないと人は動かないことを「外発的モチベーション」、報酬や罰がなくてもやりたいことやること「内発的モチベーション」と呼ぶ。

 
 
私たちは、つい外発的モチベーションを使って子どもをコントロールしようとする。例えば、静かにしていたらご褒美をあげる、悪いことをしたら大好きなおやつをあげない、など。しかし、それは子どもの人間脳(知的能力や抑止力、主体性などの実行力)を無力化させ、成功・幸せに繋がらないという。
 
なぜか?
 
 
①動物実験による行動心理学ベースの考えだから

外発的モチベーションは報酬や罰を与えるもので「外からの働き(刺激)だけで人は動く」という行動心理学の考え方がベースとなる。この外からの働きかけは、望ましい行動を増やす「報酬」、望ましくない行動を抑制する「罰」を、「正(与える)」「負(避けられる)」それぞれに掛けて、4タイプある。

 

(好きなものを与える:正の報酬、好きなものを与えない:負の罰、嫌いなものを与える:正の罰、嫌いなものを避けられる:負の報酬)

 
 
しつけの中でよくやりがちな行為であるが、結論としてそれぞれ子どもにいい影響は与えない。
 
それぞれ①「正の罰」は子どもの成長に大きな害が生じる。②「負の罰」はしつけに役立つが、子どもがとても嫌がり、正の罰と同じような影響を与えることになり、頻度が増すと改善どころか悪化する。③「正・負の報酬」はモチベーションを上げて行動を増やすが、創造性の高いことには効力を発揮せず、子ども本人がもともと持っていた興味は失われてしまう(アンダーマイニング効果)。
 
アンダーマイニング効果は、意外と見過ごされている。正・負の報酬というのは、テストで100点採れば欲しいものを買ってあげる、人に親切にしたらお風呂掃除しなくていい、などに当たる。これらは、モチベーションを上げて行動を促すが、このようにすると、もともと『テスト(勉強)』『人に親切にする』に興味があったとしてもその興味は失われてしまう。さらに、このテストが例えば絵画のような創造性を求められるものであれば、報酬が出てきた段階で得点が伸びなくなる。
 
 

➡︎私たちは、つい外発的モチベーションを使って子どもをコントロールしようとするが、これら行動心理学は動物実験から結論づけたものである。報酬や罰はベースに競争があり、やらされる競争はストレス反応を起こす。すると脳はサバイバルモードになるので動物脳が活性化し今必要なエネルギーをすべてサバイバルに向けるため、人間能(創造性などの知的活動や自制心や自主性などの実行機能)を無力化させる。しつけで報酬や罰を使うとすぐに効果は出るが、私たちは動物を育てたいのか?考える必要がある。

 
 
 
 
②これからはAIの時代であり、創造性が求められる

報酬や罰によるしつけは、産業革命後の時代なら幸せにはなれなくてもせめて成功はしたかもしれないが、 AI の時代には幸せも成功も手に入らなくなる可能性が高まる。指示や命令でやる単調な作業は AI に取って代わられるため。人間脳が育たずに言われた通りにしかやれない人間は仕事を作り出せず人を思いやる気持ちも持てない。





 

自己肯定感(自尊心)は害になることもある

過去にアメリカで自尊心ムーブメントが起きたが、効果が出なかった。その理由のひとつに、自尊心の2タイプを区別できなかったことにあるとしている。

 

自尊心(自分が好き)の2タイプとは、

第1のタイプ...自分が好きな理由が他人との「比較」からくるものであり、『条件付きの自尊心』。

第2のタイプ...自分が好きな理由が良いところも悪いところも含めて受け入れている自己受容から来ている

 

この2つは全く別物なので混在しないよう注意が必要。自尊心ムーブメントが間違っていた理由のひとつは、この第1タイプを高める方法が使われたから。例えば、自己イメージを高めるために根拠のない賞賛をしたり、他の人と比較してできていると言って安心させたり、自己イメージを下げないように勝ち負けをつけることを避けたり、実力以上の成績をつけたりした。根拠のない賞賛は子どもに実力以上の力を持っていると勘違いさせナルシシズムを助長することがある。また自分はできるから自分を好きだと思ってると、できないことを受け入れられない。できなかったらどうしようという不安が生じ、カンニングすることもある。

 

子どもを愛して制限なくやりたいようにさせる(迎合的な)子育てスタイルは、子どもの幸せに繋がらない

迎合的な子育てスタイルは、学力が低く、心理的に不健康で問題行動が多い傾向になる。なぜか…それは「制限」や「子どもの責任」という概念が抜け落ちているため。自分で決めてやる自律性とやってはいけないことを守る制限は相反するように感じるかもしれないが、制限は子どもに責任感を身につけさせることになる。

 

デシは、親が下記の3つの要素をもって関わると自律性を損なわずに制限を守れるようになることを発見した、

 

①まずやりたくない気持ちに共感しその気持ちを認める

②なぜそのことが大切なのか合理的な理由を説明する

③圧力を最小限にした言い方や質問の仕方で伝え選択の余地(自己決定)を与える

 

最後の③がポイント。自分で決めれば責任感が生まれる。自分で決めさせないで責任だけ負わせようとしても難しい。

 

また、子どもに決定の機会を与えると次の効果がある

①人間として尊重されたと感じる

②やらされてないので内発的モチベーションが高まる

③自分で決めた事の権限を管理し責任感が芽生える 

 
 
子どものやりたいようにさせることは一見、子どもの考えを尊重しているようにも見える。しかし、制限なく自由にさせると、子どもに責任感が生まれない。制限することは決して子どもの自律を妨げるものではない。やりたくないことに共感して、理由を説明。自己決定の機会を与えることで、子どもは責任感をもつようになる。
 
 

 

以上です。

興味深いところは多々ありましたが、私の中での気付きをまとめました。※著者の言葉とともに、私の考えも少しミックスさせてます。

 

 

そして、最後に補足。

 

この本の題目は『世界に通用する子育て』とのことですが、筆者は、『世界に通用する子ども』を次のようにしています。

 

①世界中どこにいても幸せで

②自分の強みを活かして人を幸せにする子

 

幸せがキーワードです。

つい、世界に通用=能力的なものをイメージしがちですが、そうではないです。

子どもの幸せを願う全ての方にベストな本と思いました。