オレの話をした事があっただろうか。
オレはカラス。
かつては、何十羽の大集団を束ねていた。
周りからは親分と呼ばれ、恐れ敬われていた。
あの頃のオレは、今よりはるかに若く体力も充分にあったし、
血気盛んで野心家だった。
いつも的確で素早い判断をし、まわりの奴らからは全幅の信頼を得ていた。
今はこうして人間と親しくなって、いろんな連中が悩みを相談しに来たり、
愚痴を言いに来たり、そんな風になってしまったけど、かつてはまったく逆だった。
人間達とは敵対関係で、いつも小競り合いをやり合っていた。
ある日、些細な事から本当に大がかりな戦いに発展してしまったんだ。
”人間対カラス族”
あの戦いは壮絶だった。
どんなに頑張っても、所詮オレ達はカラスだ。
限界がある。
オレもあの時の戦いで羽を痛めてしまって、
今では満足に飛ぶことの出来ない身体になってしまった。
そんな事はどうだっていい。
だけどなあ、憎しみの気持ちを持つもんじゃない。
憎しみからは何も生まれない。
最終的には破滅するだけだ。
解っている・・・頭では解っていた。
この戦の先に待っているのは、破滅だけだって。
だからすぐにでも辞めれば良かったんだ・・・そんな無益な戦いなんて・・・
でも、オレの心が邪魔をした。
あれは、何だったのだろう。
憎しみは強かった。
しかし、きっとそれ以上にオレを突き動かしたのは、
意地・・・リーダーとしての意地であり、プライドだった。
くだらない事さ、今にして思えば・・・
そんな事の為に、多くの尊い仲間の命が犠牲になった。
今は解る、自分がどうするべきだったか・・・
だけど、その渦中にいる時は、気が付かなかった・・・
いや、気が付いていたけど、無視していたんだ、その感情に。
なぜならオレは誇り高きリーダーで、一旦やり始めた事は、
最後までやり遂げるのが、オレのスタイルだったからな。
愚かだった。引き際を誤ったんだ。
そうして多くの仲間を失った。
なあ、アンタ。
辞める勇気も時には大事だぜ。
いや、むしろそっちの方が大変なんだ。
だけどなあ、もしアンタの心の奥底で “助けてくれ!もう無理なんだ”
って悲鳴が聞こえたなら、その心の声を素直に聞くのも一つだぜ。
辞める勇気は大変かもしれないけど、どうしようもない事って人生にはあるからな。
引き際も大事だってこと。
無様だろうがみっともなかろうが、そんな事どうだっていいじゃないか。
世間からどう言われたって、アンタには強い見方がいる。
アンタの事を一番知って理解している、アンタ自身だ。
だから、もし迷っているなら、ほんのちょっとでいい。
立ち止まって目をつぶって、心の声を聴いてみな。
何て言ってる? それがアンタの答えかもしれない。