うっすらと橙色に明るくなりつつある空を見上げ、ひとりで家を出る。

ジョギングやランニング、ではなくウォーキングとも言い難い。

ただの散歩。


坂の上の神社にお参りをする。

ここの桜はこの辺りで一番早く咲く。もうつぼみはふっくらと色づいてカウントダウンを始めている。


迷路のような住宅街を気ままに歩き回る。早朝の街は静かで人通りも少ない。縁側に腰掛けるおばあさん、玄関先を掃くおじさん。あれ?何となく目をそらされたような…。


もしかして自分は怪しく見えるのでは?


ダサいスプリングコート、ボロいスニーカー、寝癖隠しに深く被った帽子。ジャージなどで運動してます感を出した方が良かったか?


いや、犬がいれば良い。犬の散歩なら怪しまれない。

妄想の犬の名を考える。ポチ、タロー、サクラ、ユズ、クッキー、ココア…どれもしっくりこない。


思いついた!

「もふまる」にしよう。

そんなわけで私は妄想の愛犬、もふまると一緒に散歩を続けた。


よけい怪しくなった。