朝、出勤する前に花に言った。
「好きな車、買っていいよ」
帰宅後、上機嫌な花に「これにする」とパンフレットを見せられた。
トラック…。花の開いたパンフレットには、ISUZUのガチトラがあった。
「アレクスのと一緒のがいい」
確かに、以前はELFに乗っていた。今もホテルの仕事用には使っている。
花はELF-Mioに乗りたいらしい。
困った…。
そして思いついた。
「学校のお迎えとか、どうする。校門の前に停められないないよ」
花はしばらく考え、「そうだね。ちょっと他のも見てみる」と口を尖らせていた。
花はね、独特の趣味だから。
人前に出るのが苦手で、パティシエールなのに接客業をしたくなくて店舗は持ちたくない。人見知りが激しくて引っ込み思案なくせに、ぼくにだけ積極的な女の子なのだ。
「ISUZUがいいなら、Lapinとか、いいじゃないか?」と提案はしておいた。
今、花は「アレパト」に夢中だ。
アレクス・パトロール。SNSでぼくの元カノを洗い出し、毎夜のようにぼくを攻める。
しかしやきもちを焼かれるのはかわいくてしかたがないんだけど、ありもしない浮気をでっちあげられてはかなわない。
過去を責められたぼくにせめてできることは、「なんでも買っていいよ」と許しを請うだけだ。
だけど、トラックは反対だ。なにより、事故を起こすことが心配だ。
