浅田 次郎
王妃の館〈上〉浅田次郎は大好きな作家の一人。
「蒼穹の昴」や「壬生義士伝」等の正統派歴史ロマンも素晴らしいが、
やはりこの人の本領は「きんぴか」や「プリズンホテル」などの笑って泣けるピカレスクものにあると思っている。
さて、この「王妃の館」は、前者のような漢くさい正統派小説としての一面を持ちつつ、
後者のような笑いもふんだんに盛り込まれているという、
まさに俺のようなファンにとってはど真ん中の小説。
浅田作品の中では「オー・マイ・ガァッ!」と同じ位置づけか。
ということで、本作も素晴らしい出来。
ストーリーは、超豪華ホテル「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」へ
ツアーで訪れた日本人観光客たちが織り成す現代パートと、
ルイ14世とその子供ルイ・ド・ソレイユ・ド・フランスをめぐる17世紀パートの二つで構成される。
作中の超人気作家「北白川右京」の作として描かれる、17世紀パートでは
いつもの浅田節で読者をぐいぐい引き込みつつ泣かせ、
一方の現代パートではこれまた浅田次郎らしい笑いで楽しませてくれる。
やはり、浅田次郎は長編を書いてこそ、であることを改めて認識させてくれる一冊。
最近は短編が多いが、もっと長編にも取り組んでいただきたいと強く思った。