エンドロールに「For Dad」という二文字が浮き上がり

この映画の制作・監督のスティーヴン・スピルバーグの

父を思う気持ちが心にしみた。

 

子供の頃から父親(アーノルド・スピルバーグ2020/8/25に他界)と共に

映画『ウエストサイド・ストーリー』を

セリフまで覚えてしまうほど何度も見て、

食卓ではサウンド・トラックを聞きながら、

歌もそらんじて歌っていた…という、スピルバーグ。

 

彼が初めてミュージカル作品を制作・監督したのは

父への深い感謝の気持ちと、家族との思い出と、

そして同時に、

60年以上も経過しているのに

否、原案となっているシェークスピアの「ロメオとジュリエット」の時代から考えたら、

420年以上も経っているのに

いまだに、むしろ更に、

人種間の分断や、銃暴力が社会で横行していることへの

強いメッセージでもあるのだろう。

 

1963年の映画『ウエストサイド・ストーリー』は何回も観た。

サウンド・トラック・アルバムもなぜか2枚持っている。

 

 

ナタリー・コールとリチャード・ベイマー演じる

マリアとトニーの胸ときめくバルコニー・シーン。

 

ジョージ・チャキリス率いるシャークスの

つま先が空にピンと伸びているクラシック・バレー要素たっぷりのダンス。

 

 

リタ・モレノの強烈なヒスパニック系女性の個性と、

スカートを翻して激しく踊るダンスなどなど…

思い出に残るシーンがたくさん!

 

 

そして今回は…。

なんといってもマリア役のレイチェル・ゼグラーに

目と耳を奪われた。

 

高校生の時に3万人が参加した1年以上に及ぶオーディションを経て

見事にマリア役を射止めた若干20歳の新人さん。

 

本作がハリウッド映画デビューだそうだが、

純粋無垢な18歳だけれど、

自分の意思をしっかり持つ気丈な面もある役を自然にこなし、

その歌声は透明感のある、まさに天使の声。

 

彼女はこれまでもSNSなどで自身の美しい歌声を披露しているので

そちらで確認!

今後はさらにシンガーとしての活躍も楽しみ。

 

女優としては

すでに本年度の第79回ゴールデングローブ賞で

主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しており、

アカデミー賞でも同じく主演女優賞にノミネイトされているが

来年はシンガーとして

グラミー賞もの狙える音楽作品を発表してほしいな。

 

そして、他のキャストは…。

う~ん、

私の中ではリチャード・ベイマーや、ジョージ・チャキリスや、

リタ・モレノの印象が強く残っているので、可もなく不可もなく…

と言った感想かな?

(子供の頃に観たときに受けた第一印象が強すぎて…)。

 

でも!

そのリタ・モレノが61年の作品には登場しない人物、

ヴァレンティーナ役で

90歳という年齢には見えない美しい姿で今回登場する。

そして、あの名曲「サムウェア」を、本作ではリタが歌う。

 

 

前作ではトニーとマリアが

いつまでも続くジェッツとシャークスのと闘争、分断を悲しみ

  きっとどこかに

  私たちのために

  平和で、穏やかで、ひらけた場所が、

  待っているはず…

 

と歌ったのだが、

 

今回は、自分もプエルトリコ系移民で、

白人男性と恋に落ち、結婚。

昔から続く両者の対立、争いの渦中にいながら、

スラム街で育った両者の子供たちの成長を見てきた

ヴァレンティーナが、

今なお若い世代にも続いている対立に心を痛め、

中立の立場で平和を望んで歌う。

   

   きっとどこかに

   平和で、静かで、ひらけた場所があるはず

   今はまだ道半ばだけれど

   お互いを学び合い、分かち合い、気遣い合い

   許し合う新しい生き方を見つける場所が

   いつかきっと、どこかにあるはず…

 

レナード・バーンスタイン作曲の穏やかで美しいメロディと

スティーヴン・ソンドハイムの平和を希求する歌詞が

ヴァレンティーナが静かに歌うからこそ

説得力を増して心にしみる。

 

リタ・モレノは

今回は制作総指揮としてもクレジットされている。

 

 

さらに、

60年前にアニタ役で

アカデミー賞の助演女優賞を受賞したリタが、

今回アニタ役を演じている

アリアナ・デボーズと劇中対面するシーンがあるが、

もし今回のアカデミー賞で

アリアナが助演女優賞を受賞したら、

リタも同時にステージに上がって

前代未聞の感動の受賞になりそうだ。

 

『ウエストサイド・ストーリー』は

本年度アカデミー賞

作品賞&監督賞、主演女優賞、助演女優賞など全7部門にノミネイトされている。

 

ラジオ日本の「ミュージック・パーク」では

先日、1961年の映画のサウンド・トラックから

アナログ盤で

マリアとトニーがデュエットする「トゥナイト」をかけたが

今週2/19の土曜日は

2021年版『ウエストサイド・ストーリー』のサウンド・トラックから

ヴァレンティーナが歌う「サムウェア」をかけようと思う。