季節外れの雨
真っ白な雪の世界を
灰色に変えた
緩んだ雪がそのままで
進みにくい歩道
なのに
いつまでも続いて欲しい
道のりと時間
片手に伝わる
大好きな人の温かさと形
あぁ…
辿り着いたら
あの駅に辿り着いたら
終わっちゃうんだ
奥歯に力を入れて
声ばかり堪えていたら
冷たかった雨が
急に温かく頬を流れ始めた
見つからないように
見つかりませんように
振り向きませんように…
すこし後ろを
あなたに引かれるように
歩いて
けして振り向かない背中を
歪む背中を
見つめていた
雨は入ってこない
ざわつく音の波
隠すことはできないから
声も涙も
我慢して
大好きな人を見送る
遠く
遠くに行ってしまう
遠く
遠くに去ってしまう
季節外れの雨は
遠くの夕焼けがより濃くなるころには
何事もなかったかのように
大きな牡丹雪に変わっている
何も話してはくれない
何も語り掛けてもくれない
押し黙って
遠くを見つめる
その人を
想いを噤み密かに眺めていた
汽車が声を高らかに
進み始める
はた、と気が付けば一人
揺れる小さな日章旗の波の中
きっと
戻ってきてくれると
小さな望みをその手に握り
汽車の背を眺めずに
この足は
帰路に就いた
くる時とは違って
それはもう
長く
長く
長く
遠い道のりと
なっていた…
by梟霊