何もない平野に
足跡が続く
それは、人ではない
獣のものだ
だが、それを見た
一人の狩人が
最初の一歩を踏み出して
あの山までの道を刻み始めた
最初の者が倒れれば
また、後に続く者が
また、その後に続く者が
次々と
道は刻まれていく
倒れた場所に
石を積み
目印をして
またその先へ
やがてその道は
平野を超え
森を抜け
岩肌を登り
頂をなぞる
そして、行く数人の先で
翡翠色に輝く湖を見つけた
雲を見下ろすことのできる
山の王を見つけた
果てしない水を湛えた海なるものを見つけた
その先で、その先で
人を見つけ
詩を伝えた
始まりの詩
旅の詩
やがてそれは
幻想を携えて
海を越えた
進んでは戻り
戻っては進み
刻むことのできない道を、紙に落として
太陽と月と星を見据えた
そしてまた
誰も知らない
大陸に
一歩を刻む
むかし、むかしの冒険譚
現代にはない
その一歩は
偉大な歴史となって
私の心を、ときめかせる
便利だ、楽だ
発展と進歩の中にいる
彼らから見れば
魔法と変らない世界の中を
当たり前のように泳ぐ私たちにあって
ただの苦労が
きっと
大冒険なのだろう
しょうもない発見が
当たり前になったことの発見が
ただただ、新しく見えてしまう
明りの中で暗闇を見つけなければならない
今
問いかけたい
争ってまで前に出る意味が、今の世にあるだろうか
虐げてまで上に行く意味が、今の世に、あるだろうか
奪い取ってまで満たそうとする意味が、今の世にあるだろうか
と。
刻むべきものは
数多星の如くあるというのに
中身は殻で
詩の中にあるような
英雄には
なれない・・・
それを、理解したとき
心に負った傷は
かすり傷程度
やんちゃな心だったものが
涙を拭き
空を見上げ
すこし大人になった
でも、大人になれば
大人になっただけの傷を負う
この傷跡は
詩になるわけでもなく
伝説になるわけでもない
いったい、何の意味が
あるのだろうか・・・・
梟霊