彼は言った
”そこに道ができるのは
その向うに
出会うためである…”
只の道に
夢を乗せて
歩く
でも好き勝手に動けない
なぜならば
僕の目の前に
彼がいるからだ
歩幅も
足の長さも違うのに
いつも振り向かず
速さだけを合わせて
語ってくるのだ
笑っているのか
泣いているのか
怒っているのか
悲しんでいるのか
何一つ悟らせないままま
唐突に
いつも
語り掛けてくる
どうありたいかではなく
どうあるかで道幅が決まり
どうするかではなく
どうやればいいかでその道の先が決まる
歩くということに
無意識はなく
必ずそこに
出会いはあるという確信があるからこそ
進んでいくのだ
君は
どうやって
君だけの場所に
いくのか
君は
どうして
そこにたどり着きたいのか
私は
君の幻として
常に語り掛けるだろう
問いかけるだろう
歩け
歩け
歩け
歩くのだ
歩いた分だけ出会いは重なり
君をより高く
深く
力強く
見守ってくれるだろう
足取りは確かに
歩は確実に
死に近づくだろう
だが
最後に開ける扉の前で
その両の足が並んだ時
自信をもって
笑顔で
ただいまと言えたなら
きっと悔いのない道を歩んだ証だ
そこで初めて
振り返ってみろ
その景色は
どこぞで握りしめた金よりも
気休めで買った女よりも
最高のものとなるはずだ
彼は言う
この道も
あの道も
変わりはない
歩くために敷かれ
進むために開かれる
立ち止まろうと
そこで終わろうと
最後は皆同じ
その同じ扉から振り返り
見る景色こそ
君自身であり
君である証明であり
君だと叫ぶことができる
生きた痕跡だ
ただの一つも
彼は、僕の質問には答えない
どこからきて
どうして語るのか
何者なのか
まるで
何かを待っているかのように
ずっと前だけを見て
嬉しそうな声で
その背中を見せつける
大きく広いそれが
憧れる何かに見えるときもある
でも
何一つ分からないまま
大きくなった僕の
目の前から
ある日を境に
忽然と居なくなった
視界は広く、奥深く
無数の道をとらえている
朝日に染まりながら
先が見えない未知の手前で
なんとなく
わくわくした僕が居て
なんとなく・・・
いなくなった理由も
理解、した・・・
僕がいる
”よし、行こう
あの扉へ
ここからが、僕である道なのだ”
私は願う
”踏み出した一歩が
どうか
幸せであるように”
寂しそうに見送る影は二つ
そう
居なくなったのではない
その先へ
行けないのだ
彼の小さくなる背中を眺め
すこし
羨ましいと思っている
出会うことのない出会いに
彼は・・・。
進むのだ
しっかりと
歩むのだ
ゆっくりと
人生という道に
踏み外すということも
転げ落ちるということもない
どうか
気づいてくれ
そこにも出会いはあったはずだ
道は、出会うためにあるものだ
そこに向かうことを選んだのは
他でもない
君自身だということに
気づいて
笑って逝けるその時へ
辿り着いてくれ
by梟霊