送り者 | 梟霊のブログ

梟霊のブログ

適当に詩をUPします。
評価に、興味なし
フクロウ大好き
きのこ大好き
山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

 

 

行ってらっしゃいと

言われていた

あの扉の向こうに

その人はもう居ない

 

おかえりなさいと

言ってくれる

あの扉の向こうに

その人はもう、居ない

 

カラカラと響く

乾いた音

真っ暗な空間は

僕の心の中を映したかのようだ

唐突に訪れた

望まない別れ

残された孤独

真夏の太陽ですら

温めることのできない

この空気

あの頃から

止まったままだ

そして

眠る前の一時

二度と目覚めないことが

どれほど

幸せであるかを

悟った

 

 

幸せと言える君の顔

 

死逢わせと言える僕の顔

 

背中に

付きまとい始めた

不思議な子

子犬のように諦めが悪く

子猫のように気まぐれ

わざと隣を歩いてくるから

鬱陶しい

溜息

いつの間にか

それが当たり前で

あの頃から

遠ざかっていた

灰色の青空のした

大人になる一つ前

恋の花を咲かせる小さな瞳は

二つとも

僕の横顔を映していた

僕の瞳も

うっすらと

その空間色に染め始めていた

 

ものずきとものぎらい

誰もが煙たがるそれに

初めて触れた何かが

その集め方を知っていた

集めた其れが透明で

それを水であると

大声を上げた時

いつの間にか

一人、二人と

賑やかになっている

気が付かないうちに

笑い合って

気が付かないうちに

じゃれ合っている

あぁ…

楽しい

そう思えていた

はず、だった

 

両足は空を見上げ

両手は何もつかめないまま

どこか遠くから

飛んで行った

心の中で

嫌だ

嫌だと

なんども叫んだ

いや…

本当に叫んでいたのかもしれない

けれど

耳の中に響くのは

つんざく風の虚しさだけだった

 

行ってらっしゃいと

言われていた

あの扉の向こうに

その人はもう居ない

 

おかえりなさいと

言ってくれる

あの扉の向こうに

その人はもう、居ない

 

そして

その扉を開ける

開けてくれる

その人は

もう

居ない…

 

理由も判らず

理由も知らず

白黒の世界を進む棺を

私は眺めていた

確かに在った

君の声も温もりも

姿も笑顔も

たった一枚の紙切れになった

通り過ぎていく安らかな顔が

どこか邪悪に見えた

なんども言った

好きという言葉は嘘じゃない

大好きという言葉は、嘘じゃない

抱き付いたことも

下心なんてない

真直ぐに飛び込んだはず

なのに

今は

何もない空間しか

腕と胸の間に残されていなかった

心地よいざわつきは

耳障りな音に変わって

私は

そのまま

大人の扉を通り過ぎた

 

何となく生きて

何となく結婚して

何となく老いていく

ぽっかりと空いた穴からは

寂しい

寂しいと

冷たい風が

零れていた

それに

一時泣いても

あの頃の涙の意味からすれば

とても乾いていて

どうでもよかった

隣を歩く黒い影

それが

もし…

君であったなら…

儚く願うことは

やめられない

 

行ってらっしゃいと

言われていた

あの扉の向こうに

その人はもう居ない

 

おかえりなさいと

言ってくれる

あの扉の向こうに

その人はもう、居ない

 

そして

その扉を開ける

開けてくれる

その人は

もう

居ない…

 

やがては朽ちて

空き地なった

大切な思い出

大切な想い人

覚えている人も

もう

居ない…

 

誰も

居ない…

 

そう

誰も…

 

ただ…

忘れた頃

適当に知らない誰かが言った

何気ない一言が

水面を揺らす

雨粒のように

次々と波紋を描き

小さな恋の悲しい物語を

形作り

何かを伝って

遠く

遠くまで

囁いていったそうだ

まるで

残り火を

掬い取り

還るべき場所に還すかのように

 

 

 

 

 

by梟霊