人の視線の冷たさに
心を震わせて
言葉を選び
顔を探り
歩むことを躊躇う時世
前に進もうと
下がろうと
変わらない明日への絶望を
独り
ぽつんと味わう
舌打つ時計と窓の向こうの雨天
冷たいよ
冷たいよ
ただ、それしか
この肌には
届かなかった
春も夏も
踏み抜く後は雪のよう
夏も秋も
振り向く跡は寂し気に
私を嘲笑う
如何に太陽が
肌を焦がそうと
溶けることのない氷は
心そのものにこびり付いて
白く
白く
伸びていく
擦違う
恋人たちの
楽しそうな囁きは
いつになく
その中を
荒れに荒らし
ヒョウヒョウと唸り声を
この耳、奥底に
轟いていた
あなたが触れてくれるまで・・・
何気ない日常に
見いだせない希望が
暗闇を
街灯のように幻の温もりを
所々に
点々と
延々と
残していた
その一つには
必ず、あなたがいて
私に
手を振ってくれている
どうしてだろう
疲れるだけのこの道も
息切れるだけのこの道も
届くあなたが居るだけで
こんなにも
こんなにも
前に
前にと
進んでしまう
どうして・・・
やっとのことで触れた手は
温かさよりも
熱かった
優しさよりも
痛かった
躊躇うほどに
大きく先開く花のように
私の目の前に差し出され
光の影になっているはずの
あなたの顔は
眩い限りを尽くし
照らしている
怖かった
大きく踏み出せることが
恐かった
不自由なく進めることが
あなたの手を握る私の
冷たく小さな手
物陰で震える子猫の様な
臆病な心
初めて知った
世の中の広さと
色の多さを
持て余して
言葉に出来ず
ただ
ただ
まっすぐに
好きになったと
伝える日々が続いた
それが恋なのだ
それが愛なのだ
初めて迎えた春は
ただただ、その想いで
氷が解けたばかり
ゆらりと立ち上る湯気
黒い大地
誰もが持っているはずの
緑なんて
私にはない
あなた
ねぇ、あなた
ここに何を撒けばいいの?
あなた
ねぇ、あなた
ここに何を植えればいいの?
静かに
傍らを歩きながら
なんども見上げて
そう
考えた
まだまだ始まったばかりで
こころは
冷たい風が吹く
けれども
その風は
ゆったりと
そよそよと
わたしのこころを見渡してくれているようで
嬉しさが
込み上げた
そう
あなたが
語り掛けてくれるたびに
あなたが
手を握ってくれるたびに
私の中は
光と青と白で
輝いて
どこまでも
輝いて
生きていてよかったと
なんどだって
思えるのだ
by梟霊