灰が舞う
降り注ぐ夏の日照り
舞い上がる砂ぼこり
その陰で
いつ降ったのか判らない
草むらの最後の一滴が
何も言わずに
落ちていった
どこまでも
澄み切った空がそこに広がった
まるで一月先の未来の秋空が
其処に在るように思えた
様々な色が
澄み切った水の中にでもあるように
はっきりとくっきりと映し出され
この世界が
別の世界に飲み込まれたかのように
感じた時
ただ一言の訃報が
それぞれの意味を反転させる
喜びが悲しみに
夏らしい暑さが
どこか清々しい悲しみに包まれた
知らぬ間に焼かれた灰が
今頃は箱の中に収められているころだという
あぁ・・・
あぁ・・・
さようなら
おつかれさま
ありがとう
そのどれもが
心のどこから投げ捨てられて
蒼一面の視界には
まるで灰が舞うように漂う
季節外れの柳の綿毛があった
ふらふらと
ふわふわと
どこか美しく
どこか懐かしく
どこか寂しそうに
ゆっくりとゆっくりと堕ちていき
風に揺られるまま
大地を転げまわる
近くの蝉の声が遠くに引いたころ
誰もいない部屋の中に舞う埃が
誰かが歩いたかのように揺らめき
そして
灰の上を歩いたかのような
一本の謎めいた線が
夕陽に向かって伸びていた
それが最後の挨拶かどうかは解らない
けれども
そうしなければ
納得できない自分が
この時この瞬間に居たことは
確かだった・・・
byキケロ