素手
あなたのては
なにをしてきた
手
なのかしら
あなたのては
なにを握り締めてきた
手
なのかしら
煙草を片手に黄昏たあの日も
理不尽に叱られ悔しがったあの日も
あなたの心のままに
その手は
あなたより一歩先に居る
例え傷だらけになろうとも
例え、失う危機に在っても
きっと
あなたより前に居て
あなたより一秒前の世界を生きているのだ
わたしのては
なにをしてきた
手
なのかしら
わたしのては
なにを握り締めてきた
手
なのかしら
文字を綴り
画く
持ち上げ、支える
あの空に
この手を掲げ
じっと眺めてみた
わたしのては
なにをもとめてきた
手
なのだろうと
溜息が混じり
きゅっと握り締める
逆さまに飛び込んできた
顔に
引っ込めはしたものの
差し伸べられた
その手を掴みゆっくりと起き上がる
あぁ、そうか
わたしのこのては
あなたの手を
握り締めるために在るのだ
あぁ、そうか
わたしのこのては
あなたの手を
掴み取るために在るのだ
と
小さな光を包み込むような心地のまま
そう
理解する
あなたのては
なにをしてきた
手
なのかしら
わたしのては
なにを握り締めてきた
手
なのかしら
あおもむろに
結びあう一時に
ごつごつとした肌触りから
ふと思う
あぁ、わたしは
この手を持った人を愛したのだ
あなたは私の
この手をどう思うのだろう
すべすべなのだろうか
ちいさい、だろうか
あたたかい、つめたいなのだろうか・・・
すこし気になる
けれども
所詮
手
なのだ
何も隠す必要もない
ありのままで居られる
素のままの手、なのだ
気にしたところで
思ったところで
時間の分だけ年季が入り
使った分だけ個性が顕れる
飾るだけでは見えないそれを
どれだけ偏屈に眺めても
変わることはないのだろう
byキケロ