止まった世界
僕の鼓動は
止まりたがっている
僕の鼓動は
静かに、眠りたがっている
世界が
ぐるりと回った
肺は、深く静かに息を吸った
足は、支えることを諦めて
地べたに寝そべり
背は、ゆっくりと曲がりだした
脳は、まだ理解していない
前へ
前へ行けと
下々にまで声を荒げている
僕は・・・
何をしているのだろうか・・・
耳が、外界の音を閉じ始めた
ぼんやりと遠のいていくのが判る
身体のあちこちが諦め始めているのが解る
ただ一本の、相棒が
目を覚ませと
僕の胸を、殴りつけている
僕は・・・
どうなっているのだろうか・・・
片方の瞳が、在りもしないものを映しはじめ
それがじわじわと広がっている
心というものが
それに抗い
背を無理矢理に伸ばした先に
見たこともないような
美しい世界が広がっていた
麗しく、止まった世界が広がっていた
諦めた反対の相棒が
いつまでも動かない太陽に手を伸ばした
だが
触れたその先は
唯の地面で
気が付いたその先から
時間が濁流のように動きだし
まるで動かなかったものたちが
何事もなかったかのように
当たり前のように
佇む
僕の心臓は、止まりたがっている
見向きもしない他人を見渡して
存在の価値を
知った
僕の心臓は、眠りたがっている
振り向きもしない世界を眺めて
存在する意味を
失った
なのに僕は
それを良しとせず
またこうして立ち上がる
今この時に
諦めてしまえば、楽だっただろうに
何事もなかったかのように
苦笑いを浮かべ
誰もいないのに
笑い声を
静かに溢した
吐き出した想いは安堵を重ね
胸を叩き続けたであろう相棒は
心配そうに胸に手を当てて確かめている
足は、その大地を踏みしめ
何が起こっていたのか
わからないと言った感じだ
ほんの一瞬の出来事のようで
永遠のような一時
苦しかったような
楽しかったような
惜しかったような
夢のような世界を
垣間見て
この身体とは別の何かが
生に
未だしがみ付いて
駄々を捏ねているのだろうと
悟るしか
無かった・・・
僕の鼓動は、動いている
僕の鼓動は、動き続けている
いついかなる時も
休むことなく
淡々と
未来を
何かに刻み続けている
なのに、あの時とは逆で
今度は
僕自身が、終わりたがっていた
それに対して
鼓動は、何も語らない
心臓は、何も変わらない
静かに、その動向を
見守っているようだった・・・
by銀翼のキケロ