一匹狼
誰も振り向かない
深夜の道の上で
吐息すら白くなることを辞めた
極寒の中
コーヒーの香りが
微かに残るマスクの中で
何かに怯えるかと思えば
そうでもない
心無く
ただ、ひたすらに
警告色の赤い棒を
振り抜いているだけだ・・・
ほとんど誰も通らない
深夜の道の上を
ただ、ひたすらに
雪を寄せていく
ラジオから流れる
人の声
音楽
何かを紛らわせてくれているかと思えば
別段そうでもない
この重機の駆動音がある限り
どこまでも
どこまでも
孤独の中に落ちていく・・・
私以外、誰もいない
部屋の片隅
差し込んだ月の明かり
暖房すら付けず
何かから逃げるかのように
噛みつく仮想空間
平気なようで
寂しくて
唯独り
誰かを貶めて
奇声を上げる日々
張り詰めた空気に
どんよりとした想いが
蒼く溶けだして
ふと、振り向いた時
私だけの聖域が
別の誰かのもののように思えて
カチカチとひたすら打ち込んでいた手を
止めた・・・
雪原を歩く
仕事をしているという自覚もある
時々顔をのぞかせる
美しい星空と月
ただ、吐き出す熱気は
どこか抑え込んでいる狂気を含み
私の瞳を闇より深く染め上げる
誰も知らない
誰にも教えてはならないし
伝えてはならない
だだっ広い、この場所で
一つ、一つ
後続に続く、隊員の為に標をともしていく
あぁ、たまらない静寂
あぁ、たまらない孤独
普段は隠す牙すらも
此処では誰も見ない、見えない
独りにして一人
紛らわす憎しみも恨みも
全身に滾らせたところで
誰も気が付きはしない
一匹狼のように
何かに飢え
何かに狂い
当てもなく彷徨う姿に
重ね
時々、私は、私を認識できなくなった・・・
死ぬことが格好いいと思う?
生きることが素晴らしいと、思う?
ここにいて良いと思う?
あの場所へ行きたいと、思う?
私は誰?
あなたは、誰?
どうして、出会ったの?
どうして、存在しているの?
誰もいない道を
唯独りで帰った
連なる街灯が
あるところでぶっつりと切れていた
口を開けて待っている常闇
立ち止まり
街灯の下で俯いた人
それは・・・
もしかして、あなた?
by死神キケロ