恋は散り、恋は芽吹き
さりげなく
鼻を掠めた
桜の香り
憂鬱な木漏れ日が
淡い紅色に染まり
娘たちの青い声
高らかに歌う
唯独り
遠くへ逝く
君の背を見つめる
私の想いとは裏腹に
さすらう時の薄情さを除けば
例え灰色となろうとも
美しいと思えただろう
あぁ、後悔が舞う
あぁ、後悔が舞う
涙にかすむ花弁が
ひらひらと道を埋め尽くし
追ってくるなと
言っているようだ
この手に握る
飽くなき愛情は
はらりほろりとほどけては
ギリギリと
心というものを絡めて絞まう
思い出の中
意中の的を得て
一息に詰めては
逃した君の幻よ
幻影に浮かぶ
月の綻びに光る
冷たき朝の草の上
白い吐息と逃げ出した
あの日あの時あの頃にと
未だ引きずる恋の詩
閉じては開き
閉じては開きを繰り返し
褪せた想いが染付いた
昔々のアルバム
その場所だけは埃は避ける
その場所だけは、何もない
後悔ばかりが跡となる
あぁ、未練舞う
あぁ、未練舞う
過ぎていく見知らぬ視線と同じように
積もる冷たさを頬に感じ
真っ白でまっさらな世界に
唯独りの影を落とす
形振り構わず
求める優しさ
温もりに縋る
空の酒
焼きに焼けば
深く沈み
君を見る間もなく
朝日を拝む
すさむ、すさむは心と体
いっそ
いっそと想いはすれど
笑顔がいまだに輝いて
留まる足を恨む日々
会いたいと願うことは
罪だというのだろうか
気が付けば
傍らに居る別のひと
愚痴をこぼし
愚痴を流し
背中を叩かれて
頭を撫でられて
覚えておらず
頭を下げていそいそと
寂しげに笑うその姿を
ちらり、ちらりと覗いては
君に重ねる初野の春
徐々に膨らむ
木々の芽は、再びあれを見せるというのか
いつ以来か
あの青空を眺めたのは
小さく蠢く例え無き心地
いつかどこかで
これと同じものを
捕まえていたような
両の手に
丸めた雪を持ち
重ねて置いた木の根元
再び進もう
逆らうこともなく
流されるまま
薄紅色のこの道を
幻は既になく
踏みしめる
踏みしめる
確かな大地
きっと君は、あの川に浮かぶ道なのだ
私が幾ら待とうとも
ずっと遠くへ行ってしまう
遠い過去になってしまう
追えば溺れ
振り向くことも許されず
君すらいない暗闇へ落ちてしまうだろう
ならば、生きて
変わらぬ笑顔を眺めた方が良い
淋しさがきっと押し寄せるだろう
切なさがきっと何かを乗せて引いていくだろう
それでも生きて
見つめることを選ぶ
さりげなく
鼻を掠めた
桜の香り
憂鬱な木漏れ日が
淡い紅色に染まり
娘たちの青い声
高らかに歌う
忘れるはずもなく
忘れることもなく
歩く私の傍らに
君によく似た別の人
深い影を飛び越えて
君を知り
私を許した別の人
あぁ、恋が舞う
あぁ、恋が舞う
淡いはずのこの花弁は
時に赤く赤く色づいて
私を病へと誘うのだろう
あぁ・・・
君という
恋が散り
今まさに新たな君への
恋が芽吹く
あぁ、良いのだろうか
あぁ、酔いのだろうか
私の感情へ
火をつけて
よいのだろうか
by銀翼のキケロ