雪の語り部
その日の朝は
木々の葉、野の草に
白粉を施したかのようだった
酷く冷え切ったにしては
空は、燃えるように黄金色で
美しく
それでいて
青空というものを否定した
小鳥も、何かに遠慮しているのだろうか
何も聞こえない
私が、茫然と眺めていても
静かに動き
覆う、雲の流れしか見えなかった
薄暗くなっていく部屋
吐息が、ゆっくりと震えだしたころには
ふらり、ふらりと
雪というものが舞い始めた
はじめは優雅に美しいものだった
次第に、窓を激しく叩きだし
仕舞いには
大地を、白く染めて
溶岩のように確実に埋め尽くす
私には、それを変えることも
止めることも出来ない
無力で
ただ、怯える子猫のように
身を縮め
それが通り過ぎるのを
ただ見ていた
世界から
空間から
この世から
囚われた者なのだ
しかも、救いすら無い
後に、残されたものは
いつの間にか、目の前に在った
透明で鋭い、氷の刃で
逃げる、こと、だけ・・・だった
白く美しい世界にきっと
赤く燃え上がる薔薇が
点々として咲き誇るだろう
誰にも理解されず
誰にも祝福されず
誰も喜ぶことが無い
紅い、紅い薔薇は
無力な証と共に
最後まで助けを求めて彷徨った証拠
閉ざされたのは
氷の迷宮
閉ざしたのは
他でもない
我々がいる、この世界に他ならない
それでも
必ず
億の中の一人は
見つけ出すに違いない
この雪と同じ色の
骸となった君を
悲しむに違いない
この雪と同じ
冷たさになった君を
怒るに違いない
この雪と、同じ・・・
荒げる風のように叩き付ける君を
だって、それが人として生まれ
君を見つけるために歩き出した
ものの宿命だから・・・
by幻想師キケロw